今回は、現在、私が行っているビル管理(ビルメンテナンスとも呼ばれています)の仕事のご紹介です。微力ながら、仕事を通して省エネに貢献しています。技術的な守備範囲が広いので、私の仕事の電気分野に限って、資格の取得方法やキャリアアップの方法を説明させて頂きます。ご参考にして頂ければ幸いです。

ビル管理の仕事

 ビル管理の仕事の範囲は広く、大きく分けると、①設備管理・保全、②警備・防災および③清掃管理・衛生管理に区分される。仕事の内容により、必要なスキルや資格も異なって来ます 参考資料1)。

 私は、①設備管理・設備保全の分野でビル管理の仕事を行っています。建物を除くと、次の様なものが主要な管理対象の設備となります。それぞれの設備は高度な専門的な知識が必要なので、メーカーや専門の点検受託会社へ定期点検や修理を依頼するのが普通です。ビル管理の目的はビルの利用者に対する快適な環境や利便性の提供です。ビル管理の日常の主要な仕事は、設備機器の運転・監視、日常点検と分析・保管をする業務となります。これに加えて、「電灯が点灯しない」「エアコンが効かない」「水漏れ」などの突発的な問題への対処が必要となります。このため、普段はお客様対応がなく気楽な仕事と捉える向きがありますが、突発的な問題時は、客様対応が必要となります。

ビルの主要設備
・電気・通信設備  受変電設備、電灯・動力配電、交換器、WIFI機器など
・発電機      非常用発電機、太陽光発電装置他
・空気調和設備    ヒートポンプ、ボイラーなどの冷暖房機器、吸気・排気装置
・給・排水設備   流し・給湯器、トイレなども含む
・昇降機
・消防設備
(・厨房機器    調理機器、冷凍・冷蔵庫、ガス器具
           この項目は一般的ではありません)

参考資料1)
https://www.j-bma.or.jp/aboutbm

最新の傾向

 将来、IOT(Internt Of Things)技術が進展して全ての機器が自動的に管理できる様になると言われています。IOTは「モノのインターネット」と呼ばれて、各種センサーとモノ(機器)をインターネットで結び、センサーとAI(人工知能)で常時監視して機器の状態(正常、異常、メンテナンス必要など)を判断するシステムです。例えば、現在では、受変電設備や昇降機などはリモート監視が常時出来る様にする準備は出来ています。緊急時には駆け付けサービスも受けることもできます。IOTの時代になってもビル管理の全業務を肩代わりすることはないと考えられます。しかし、ビル管理の仕事もコンピュータで制御する仕事が確実に増えてくるでしょうし、現場の業務内容も徐々に変遷して行くものと思います

取得したい資格

 設備管理・保全の分野に限って取得が好まし資格について述べます。先の設備の一覧からお気付きと思いますが、ビルには電気設備が多いです。したがって、第二種電気工事士の免許はほぼ必須となります。ボイラー設備があるなら、ボイラー技士の免許の取得も検討する価値があります。

 私の場合は、自分の得意な専門分野の切り口で資格を取得しました。取得した順番は、第三種電気主任技術者第二種電気工事士エネルギー管理士第一種電気工事士です。ただし、第一種電気工事士は実務経験の不足で免状はありません。その代わり、認定電気従事者の認定証を取得しています。また、第三種電気主任技術者の免状を先行取得したため、電気工事士の筆記試験は免除されています。

注:ボイラー設備について
 エネルギー効率の点ではボイラーより電気を使うヒートポンプの方が好ましいが、大型ビルの暖房や大量のお湯が必要な場所にはボイラーが設置されています。

キャリアづくり

 実務経験が必要な資格と不要な資格があります。電気分野では実務経験が無くともほとんどの資格試験は受験できます。実務経験が必要な資格は、第一種電気工事士やエネルギー管理士などが該当します。これらは筆記試験に合格しても、実務経験(厳密には実務証明書)がないと資格は貰えません。

 電気主任技術者に関しては、ショッピングモールや集合住宅団地など、超大型の施設では第二種の免許が必要な職場もありますので、出来れば第二種電気主任技術者の免許を目指すのが良いと思います。

(a)勉強法
 私の勉強法は解説本やインターネットを活用した独学だけです。特には問題や不足は感じませんでした。また、この方法が一番コストが安くできます。後から知りましたが、気持ちに余裕があれば、電気工事士に関しては、同一年年度に第一種と第二種の試験を受けるのが効率的です。電気主任技術者の試験合格者には、電気工事士の筆記試験が免除されます。

 記憶力に自信の無い私は、筆記試験に関しては、最低限必要な原理に近い部分のみを系統的に理解した上で記憶して副次的な結果はその都度導き出す方法をとりました。紙に何度も書いて覚えました。電気主任技術者の試験項目は4科目ありますが、電力(電力供給など)と機械(変圧器、発電機、電動機など)が馴染みがなく一般には難しいと考えられています。エネルギー管理士の試験内容は電気主任技術者と重なる点も多いですが知識の幅が更に拡がっています。

 電気工事士としての実務経験の無かった私には技能試験は貴重な経験となりました。参考書を使って、候補問題の単線図から複線図を描く練習を繰り返し行いました。作品の製作は、先に、WEBやDVDでイメージトレーニングを行いました。次に、実際の試験を想定し、技能試験の練習用材料を購入し、作品を合計3回程試作し、問題点を洗い出しました。その結果、制限時間内に作品をなんとか作り上げることは出来る様になりましたが、見直し・修正の時間がありません。したがい、10分弱必要な複線図の作成を省略することにしました。作品づくりは順を追い、ルールに従って作れば問題ないと判断しました。間違い易い点は、別途、追加で練習しました。工具は作業が効率的に行える、操作性が良い工事士技能試験の工具セットを購入しました。

資格試験の教材
〇第三種電気主任技術者  オーム社/電気書院などのシリーズの理論、電力、機械、法規の参考書
〇第一種電気工事士の技能試験
  オーム社など、公表問題版 第一種電工技能試験 DVD付き単行本
〇第二種電気工事士の技能試験
  教科書:オーム社、 第二種電気工事士試験完全攻略 技能試験編
       又は、藤瀧 和弘著、技能試験すい~っと合格など
  WEB動画:
       よっちゃんの電工2種講座
       https://www.denkou2.com/
       電気工事士奪取プロジェクト
       https://www.youtube.com/channel/UC6iIvEdipcHyYfd8-jJchPg

  工具:ホーザンなど、電気工事士技能試験工具セット
  試作部材:技能試験練習用材料「全13問分の器具・電線セット」
 ※試験に関しては、一般財団法人 電気技術者試験センターのWEBをご参照下さい 
   https://www.shiken.or.jp/index.html

〇エネルギー管理士  オーム社など、エネルギー管理士過去問題集
 注:この資格は、研修でも取得できますが、免許維持には定期的な研修が必要です
 ※試験委関しては、ECCJ 省エネルギーセンターのWEBをご参照下さい
    https://www.eccj.or.jp/mgr1/

(b)実務経験
 資格試験の資格の突破計画と同時に実務の経験を積む計画を準備して置く必要があります免状を貰うだけではなく、経験がないと実際の仕事は出来ません。例えば、電気が停止すると、ビルの利用者に多大な人的/経済的な損害を及ぼす可能性があります。したがい、重要な設備のサービス停止は多くの場合、許されないと考えて置く必要があります。

 将来、独立して電気の保安管理業務受託業務を始めることを想定してはキャリアの積み上げを考えては如何でしょうか? 高圧受変電設備と太陽電池発電所などの管理業務が中心となると思います。そのためには、年次点検を行えるスキルの獲得と独立した時に協力してくれる仲間づくりも必要です。電気保安協会の経験者採用の基準の4年の実務経験は最低でも必要と考えられます。また、独立するなら営業的なセンスも必要となります。

(c)仕事の需要
 求人が多いのは電気工事士と電気主任技術者です。免許と実務が出来れば仕事は比較的容易に見つかると思います。エネルギー管理士の仕事は、この資格が必要な職場の数が少なく、求人も少ないです。また、エネルギー管理士の仕事の範囲は広く、管理業務が中心となります。ビル管理の仕事の定年はありませんので長く続けられます。