日本としてRE100電力とカーボンニュートラルを達成する計画

まとめ
◇日本の電気を再生可能エネルギー100%(RE100)とし、かつ国全体をカーボンニュートラルにする計画を創ろう
◇風力発電と地熱発電の拡大がRE100への鍵となる
◇風力をめいっぱい活用すればRE100が可能となる。省エネ、人口減少などを考慮すれば電力の余剰の可能性も
◇RE100には再生可能エネルギーに適した社会の変革が必須と考える

 今回の話題は日本の電力をRE100にする計画です。電力の全てを再生エネルギーで賄う方法について検討します(当サイトではRE100とします)。電力の安定供給と発電コストが課題ですが、ここでは技術論には深く踏み込まないことにします。また、国レベルでカーボンニュートラル(脱炭素社会)にすることも検討します。

更新履歴
 2021/01/15 風力発電の稼働率の最新化に伴うアップデート

再生可能エネルギーの種類と特長

 再生可能エネルギーの種類と特長を表にまとめました。 水力発電では、水の位置のエネルギーで発電機を回転させて発電します。水力発電は出力調整が比較的に容易でレスポンス時間も短い特長があります。また、揚水式に限りますが、夜間などの余剰電力を利用して、下流の水を上流のダムへポンプで戻すことにより電力貯蔵装置としても使えます。

 太陽光発電では、太陽光を半導体素子で電気に直接変換します。そのため、夜間は発電することが出来ません。また、曇りの日や雨の日は発電量が大幅に低下します。上空の雲が太陽電池パネル上を通過するだけでも電力は低下しますので、太陽光発電は電力変動が大きな発電装置となります。

 風力発電では風の力/圧力で発電機を回転して発電します。風力発電は昼も夜間も発電します。発電電力は風速vの3乗(v3)に比例しますので風速の変化で電力は大きく変動します。例えば、風速が1/2になると発電量は1/8に急減します。したがって、風力発電も変動が大きな発電装置です。

 地熱発電では、火山近傍のマグマ等の高温な地熱で蒸気を得て発電機のタービンを回して発電します。地熱は変動が少ないので安定的な発電が期待できます。

 バイオマス発電は木材チップなど(バイオ燃料)を燃料とする火力発電の一種です。木材などのバイオ燃料は、生育時に二酸化炭素を取り込み炭素として蓄え、燃焼時に二酸化炭素を放出しているだけなので、バイオマス発電では二酸化炭素の排出は正味で+/-ゼロとなります。バイオ材料の大半を輸入に依存している状況が問題と思います。

再生可能エネルギーの特長比較
〇:可能、X:不可を示す

エネルギーミックス2030の状況

 政府はエネルギー政策の基本方針としてエネルギー基本計画を定めています。2030年までのエネルギー政策のあるべき姿として「エネルギーミックス」を設定 資料1)しています。この計画によると、再生可能エネルギー:22〜24%、原子力発電:20〜22%となっています。これより、エネルギーミックス計画は、再生可能エネルギーと原子力で半分ずつ分担して、合計で全電力の約半分を二酸化炭素が排出しない電源に変えようという計画であることが分かります。

 エネルギーミックス2030の再生可能エネルギーの内訳と2019年3月時点の進捗 資料1)を示しました。表から風力と地熱の導入が遅れ気味なのが分かります。更に、日本は火山国なのになぜか地熱発電が少ないおよび世界では風力発電が再生可能エネルギーの主体となっているにも拘らず、エネルギーミックス2030の風力のウエート(7%台)が小さいことに気付かれると思います。

注意:発電電力量はエネルギーミックス2030達成時の見積もりの数値です。稼働率は資料2)と資料3)などのデータを使って計算しました。

エネルギーミックス2030の再エネ
出典:NEDO、環境省など
エネルギーミックス2030の再エネ発電量内訳
出典:NEDO、環境省など

原子力の扱い

 私は、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震により、原子力の推進は困難な状況で、大幅な計画の見直しが必要と判断しています。しかし、ここで一気に原子力を中断するのも相当なリスクがあると考えています。中断すれば、原子力関連の人財は居なくなり、廃炉に出来ない原子力発電所と大量の核廃棄物が残されることを懸念します。私の考えは、①原子炉の新設は止めるが、②安全性が確保された原子力は寿命まで使い、③廃炉と核廃棄物の処理の人財を育成することに重点を移すことです。原子力は二酸化炭素排出が少ない電力ではあるが、その数値を見込まないエネルギー政策とするのが妥当と考えます。

RE100計画

 再生可能エネルギーの導入を可能な上限まで導入してRE100を達成することを提案したい。各方式の導入可能設備容量(GW)と設備稼働率データから発電量を計算した表を示します。RE100計画の合計の発電量は935TWh/年となり、現在の総需要電力にほぼ匹敵する数値となります。今後の省エネの進展や人口減少などを加味すると 資料4)、電力の余剰が生じて来ると予想されますが、グリーン水素の製造に使えば良いと考えます。

※日本総研 資料4)による予想
日本の電力消費は、2050年には727TWh(2016 年対比▲23.5%)まで減少するとしている。自動車のEV・PHV シフトは、2030年に新車の20%、その後も増加し、2050年50%に達するシナリオに基づく。2050年の輸送部門の電力消費計は46TWhとなる。⇒輸送部門のEVシフトがこの仮定より加速しても(絶対的な数値が小さいので)全体として大きな違いは生じない。

 当RE100計画では風力発電が主要な電力となり、全体の約65%を占める。また、太陽光と比べて、地熱は発電設備容量は1/7であるが、発電量は9/10と大きくなっている。これは地熱では安定的な発電が可能で稼働率が非常に高いことによります。

※「導入ポテンシャル」と「導入可能量」の違い
導入ポテンシャルは自然条件から再生可能エネルギーの導入の潜在的な可能性を調査した結果を示している。法規制等区分、居住地からの距離他の社会条件は考慮されている。一方、導入可能量は、更に、経済的な観点を加味した数値となっている。したがって、導入ポテンシャルの方が導入可能量より常に大きい。また、導入可能量はFIT政策などの経済的な条件で増減する。風量発電の導入可能量は、資料5)より、設備容量を陸上:137GWおよび洋上:141GWとした。地熱発電の数値は資料9)※の環境省データを使用した。 ※2020/08/27 資料6)から最新の資料9)へ変更

 変動する再生可能エネルギーを多量に導入すると、電力の安定化の検討も重要となってきます。広域連系や大型蓄電デバイス(蓄電池、フライホイール、圧搾空気)の設置で大きな変動を抑えます。制御については、個人所有の家庭用蓄電池、車載電池、貯湯装置でも電力供給側からの制御を可能とするのも1つの考え方です。送電幹線系統に水素製造所を設置し、電力余剰時は水素を製造し、電力不足時に備えて貯蔵するなども考えられる。

車載電池を利用した蓄電の試算:
自動車保有台数 資料6):乗用車だけで62M台 ⇒50M台とし、50%しか蓄電に使えないと仮定
⇒総電池容量:10kWh/台x50M台/2 =250GWh =2.5億kWh ⇒1日の消費電力の約10%相当
 ※全自動車をEVとすれば、この4倍程度となりインパクトも拡大する

 省エネに関連しては、住宅やビルの断熱性能の向上や照明のLEDなどの地道な努力が基本となります。冷暖房機器や給湯設備は熱効率に優れたカルノーサイクル/カルノー逆サイクル機器に全面的に切り替えて行く、自動車のEV(電気自動車)化、ライフスタイルをシェアリングエコノミーに切り替えて行くなどの省エネに対応した社会改革の流れ/トレンドを創って行くことが肝心かも知れません。

RE100の再エネ
出典:出典:NEDO、環境省などのデータ
RE100の発電量内訳
出典:NEDO、環境省などのデータ

※修正 2021/01/15 風力発電の発電量を修正
    利用率と稼働時間を現状の実績ベースで計算していたのを最新の複数データに基づき変更
    (0.21、1,820から、0.251,2,199に変更)

RE100時の二酸化炭素排出量

 電力は一次エネルギー消費の40数%程度(二酸化炭素排出ベース)を占める。輸送部門は10数%を占めるが自動車のEV化などが進むと、RE100の世界では自動車からの二酸化炭素の排出は急減する。航空機用のバイオ燃料として植物プランクトンを活用する検討もされている。残りの約40%は熱エネルギー消費などとなるのが、カルノーサイクル/カルノー逆サイクルを活用すれば、最終的には数分の一まで抑えられる。これらを集計すると二酸化炭素の排出の80-90%は削減が可能と言う計算になる。

 残る10-20%の二酸化炭素排出は、森林ブルーカーボンなどが二酸化炭素を吸収し、固定することで、国としての二酸化炭素の排出が実質的にゼロとなり、「カーボンニュートラル」(脱炭素社会)が達成される。

参考資料

資料1)
https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/046_01_00.pdf

資料2)
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/kihon_seisaku/saisei_kano/pdf/001_s03_00.pdf

資料3)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/hydroelectric/database/energy_japan002/

資料4)
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/researchfocus/pdf/10462.pdf

資料5)
http://www.env.go.jp/earth/report/h23-03/chpt4.pdf

資料6)
https://www.nedo.go.jp/content/100544822.pdf

資料7)
https://www.airia.or.jp/publish/statistics/number.html

資料8)
https://www.pref.aichi.jp/san-kagi/shinene/suisozone/src/suisosya8kai/suisosyakai20180525_enecho.pdf#search=%27%E6%97%A5%E6%9C%AC+%E4%B8%80%E6%AC%A1%E3%82%A8%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC%E6%B6%88%E8%B2%BB%E9%87%8F%27

資料9)
http://www.env.go.jp/earth/report/31_pote/%E7%AC%AC3%E7%AB%A07_%E5%86%8D%E3%82%A8%E3%83%8D%E5%86%8D%E6%8E%A8%E8%A8%88_%E5%9C%B0%E7%86%B1%E3%81%AE%E5%86%8D%E6%8E%A8%E8%A8%88.pdf