電力の効率的な使用方法

まとめ
◇冷暖房には熱効率の良いヒートポンプエアコン/GHP(ガスヒーポン)を優先的に使いましょう。暖房時は熱効率の悪いジュール加熱機器などの使用は出来るだけ避けましょう
◇使い過ぎを防止するため、温度調整機能のあるインバータ機器などを使いましょう
◇電気代の削減効果のある最大需要電力も確認して見直しましょう

 電気を効率よく使い省エネに努め、地球温暖化防止に貢献したいと考えています。また、省エネによる電気代の削減効果(省マネー)も期待して検討してみました。

注意:ここで公開する情報は安全性を保障しておりません。全てはご自身の責任で行ってください。

電気機器と使用時間帯の把握

 電力会社からの毎月送付される「電気使用量のお知らせ兼領収書」から電気の使用量、契約内容を確認しました。我が家の場合、契約種別:電化上手、契約(最大需要電力のこと):10kVA、通電制御型:2kVAとなっています。12月度の使用電力は、総計:478kWh、昼間:104kWh、朝晩:230kWh、夜間:144kWhとなっています。我が家はガスの使用がない、オール電化の契約となっていますので、電気代は昼間:10時~17時、朝晩:7時~10時と17時~23時、夜間:23時~翌日の7時の3つに区分され、それぞれの使用量に応じて課金されます。それぞれの時間帯の電力単価は異なり、1kWh当たりの電力料金を明細から計算すると、昼間:32.32円、朝晩:26.49円、夜間:12.48円となりました。一般に電力需要の大きい昼間の単価は高く、夜間は安くなっています。

 次に自宅で使う家電製品の使用実態を把握します。電灯などの小電力機器を全て網羅しようとすると大変ですので照明器具などの小電力機器は一まとめにして扱います。消費電力が大きな機器を中心に、どの機器をどの時間帯に使っているかを図示します。機器の消費電力はカタログや機器の名盤の表示内容から入手します。家電機器の使用時刻と電力使用量の時間変化を調べます。我が家の例を図1に示しました。

図1 電気器の使用時間帯のマッピング

 照明器具、24時間動作の換気扇や冷蔵庫は一つにまとめて、合計約300Wの電力を常時消費しています。暖房器具はリビング用の床暖房、エアコンに加えて入浴時の暖房器具があります。壁や窓の断熱が良く効いているので昼間は暖房器具はほぼ必要ありません。朝の5-8時の間と夕方の17-20時の間で調理器具を散発的に使用しています。洗面やお風呂用のお湯は、エコキュートで深夜電力の時間帯の早朝に、一日分を沸かします。お湯の不足時、19-20時頃に追加でお湯を沸かしていましたが、取説を読んでエコキュートの設定温度を高くすることで追加の湯沸は不要となりました。

 消費電力の値は、カタログ値などでも問題ありませんが、我が家の場合は電子工作した消費電力モニターで測定した値を使用しました。その数値を元に毎時の消費電力の変化を図示しました(図2)。その結果、一日の電力ピークは17時から20時付近†に現れ最大約5kW程度になることが分かりました。床暖房とエアコン(暖房)を併用中に、複数の調理器具を使うと電力がピークに達します。この結果から、現契約(最大需要電力:10kVA)を見直し、下げられると確信しました。
†(修正):図2では、ピークが18時から19時に見えますが、(図の表示方法が悪く)正確には18-1=17時から19+1=20時がピーク時間帯です。

図2 電力の冬の一日の時間変化

 早速、電力会社に電話を掛け、「最大需要電力」について確認致しました。電力会社の情報では、最大需要電力は6kVA以下と7以上~10kVAに分かれているとのことでした。それぞれの基本料金は1,320円と2,200円です。現在の10kVAの契約では、電圧:単相200V/100Vで電流:50Aの(漏電)ブレーカを設置しているが、6kVA以下の契約に変更した場合、通常は工事費無償で、30Aのブレーカに取り替えるとのことでした。以上の情報から、我が家では、10KVAの契約から6kVAの契約に変更でき、毎月の電気料金が880円削減できるとの結論となりました。

 企業やビル管理の会社は、電力料金に関わるので、最大需要電力は注意して管理しています。通常は警報機能付き電力モニターを設置しています。電力が電力会社と契約した最大需要電力の(例えば)90%に達すると警報装置が警報を鳴らすように設定しています。警報レベルと超えると、利用側の関係者へ電力の削減を指示して、契約している最大需要電力を超えないようにします。我が家の場合を考えてみます。最大需要電力を10kVAから6kVAに変更した場合、通常では5kVAが上限となり、6kVAが超えることはほぼないと推定されます。ただし、運悪く、通常の使用状態でのピーク(5kVA)に消費電力の大きな機器の電源を追加投入し、瞬時的に大きな電流が流れた場合はどうなるでしょうか? 最悪のケースでは、最大需要電力が6kVAを超え、ブレーカが落ちる可能性は排除できません。そのような場合が起こるようなら、電子工作で5kVAに達したら警報が鳴る装置を取り付けたいと考えています。

最大需要電力の定義について 参考1)
最大需要電力とは、各家庭の30分毎の平均使用電力のうち、月間で最も大きい値を最大需要電力とします。

※※「W」「kW」と「VA」「kVA」の違いについて
何れの場合も「k」はキロのことで1,000を示す単位。「VA」と「W」の違いは、前者が受電電圧と電流を掛け算した値(皮相電力)を示すのに対して、後者は実際に消費された電力量(有効電力)を示す。交流の場合は、電流が電圧の波と同期していなく、通常は遅れがあり、「W」の値の方が「VA」の値より小さくなります。

エネルギー効率の調査

 フランス人物理学者のカルノーさんが考案したカルノーサイクル(Carnot cycle)又はカルノー逆サイクル 資料2)と言う言葉を聞いたことがありますか? この言葉を知らなくてもこの原理は冷蔵庫、エアコン(ヒートポンプエアコン)、エコキュート(湯沸し器)などに広く活用されています。この方式は熱効率に優れているのが特長です。詳しいことはここでは避けますが、電気ヒーターとエアコンを比較してみましょう。前者はジュール熱と言って、消費した電気のエネルギーと同じだけの熱量が出てくるだけです。一方、エアコンを暖房に使った場合は、電気の消費量の何倍もの熱エネルギーが出て来ます。マジックの様に思えますが本当です。したがって、電気ヒーター、オイルヒータなどのジュール熱機器より、カルノーサイクルを利用したエアコンやエコキュートの方が熱効率が良いわけです。

 自作した電力計を使ってエコキュート(ヒートポンプ式の電気湯沸し器)の熱効率の評価を行いました。熱効率とは、「作り出された熱エネルギー又は、お湯を沸かすエネルギー」÷「消費した電力」で表します。熱効率を3回測定し、2.2、1.9および2.5の値が得られました。この結果から、冬場でもエコキュートの熱効率は約2は確保できていることが確認されました。

※カルノーサイクルは冬場の様に外気温と湯温の差が大きいほど、原理的に熱効率は落ちます。夏場はもっと良い数値が得られる筈です。

エコキュートの熱効率の測定例:
①湯沸に必要なエネルギー
 ・沸かしたお湯の量:180ℓ≒180kg
 ・温度差:湯温90℃-水温10℃=80℃
 ・水の比熱容量:4.184×10(3) J/kg・K
 ・加熱に要した熱量:60.2 MJ
②投入した電気エネルギー(図2)
 ・電気エネルギー:7,438Wh
 ・熱量換算値:26.8 MJ
熱効率=湯沸エネルギー/電気エネルギー=60.2/26.8=2.2

図3 エコキュートで深夜に貯湯

電気の効率的な使用方法の提案

 電気を効率的に利用(省エネに貢献)するためには、先ず、電気機器や住宅を省エネに対応させます。その上で、電気機器などの運用の工夫により、もう一段の効果をあげます。

[基本]
 エネルギーの消費量を抑えるためのハード面の施策が中心になります。 ご参考:青い文字の部分をクリックするとGreen-EZ1サイト内の関係する記事へジャンプします。
壁や窓の断熱性能を高める
照明関係では、白熱電球や蛍光灯からLED照明に切り替える
・スイッチの切り忘れの恐れがある照明は、自動点滅器の導入や人感センサー付き電球※などに変更する
冷暖房機器にはヒートポンプエアコンやGHP(ガスヒーポン)を採用する
・使い過ぎ防止のために、温度制御付き(インバータ制御など)機器を使用する
・最新式ほどエネルギー効率が良いので、古い機器なら買い替えも検討する

※最近では大手メーカーからも人感センサー付きLED電球が発売されています。電球を人感センサー付きLED電球に取り替えるだけで面倒なことはありません。

[機器の使用の優先順]
暖房時には、電気ヒーター/オイルヒーターなどのジュール加熱機器よりは熱効率の優れたヒートポンプエアコンやGHP(ガスヒーポン)を使う
・使い過ぎを防止するために温調器付き(インバータ制御など)機器を使用する
・不要な電気器具は使わない/スイッチを切る

参考資料
参考1) 最大需要電力の定義
http://www.tepco.co.jp/ep/corporate/charge_c2/decision03.html


参考2)カルノーサイクル/Carnot cycle
参考2-1 https://d-engineer.com/netsuriki/kcycle.html
参考2-2 https://science.shinshu-u.ac.jp/~tiiyama/?page_id=6898