住宅の省エネの鍵-窓の断熱化に取り組もう

まとめ
◇住宅の省エネの鍵は熱を遮断する断熱性能にあります。特に窓の断熱が重要です。
◇経済的な効果の算出には、住宅の仕様、冷暖房の使用場所や使用時間帯や時間数に依存するので詳細な検討を要します。

窓の断熱化による省エネルギー住宅

 2008年春に新築住宅を購入しました。早い段階で購入申込をしたのでオプションの選択が可能でした。そこで、エネルギー効率を高めることを考えました。住宅の省エネには断熱性が特に重要です。購入した住宅は、コンクリート造りの集合住宅なので、選択するのは窓とエアコンです。南側の窓ガラスには最高性能(Low-E)の真空断熱複層ガラスを選びました。人生で初めてエアコンを買うことになりましたが、自動クリーニングかつ湿度コントロール付のエネルギー効率の高いものにしました。

 しかしながら、結局、新築住宅には住めず、住宅購入とほぼ同時に大阪に赴任し、そこで4年ほど過ごしました。その当時の経験を話致します。借りたのは、RC(鉄筋コンクリート)造りの約30m2のワンルーム・マンションでした。冷暖房機器は設置済みのエアコン1台でした。夏季は問題なかったのですが、大阪の冬は寒かった。換気を最小に絞っても未だ寒い。そこで、窓の断熱化を決心しました。賃貸住宅なので窓を替えることも出来ず、エアーキャップ(いわゆる、プチプチロール、梱包に使う気泡緩衝材)を購入して、窓に後で剥がせるように貼りました。なお、バルコニーに出れなくなりましたが、一度も窓を開けることはなかったので問題ありませんでした。その結果、非力なエアコン1台でも十分な暖がとれるようになりました。夜は、エアコンを止め、昔懐かしい湯たんぽを使いました。

江戸の冬はとっても寒かった

窓の断熱化のあり/なしの比較と効果の見積

 住宅の断熱はエネルギー効率の観点からとても重要です。熱の出入りは、窓、屋根、壁および床を経由した熱伝導と、人の出入りや換気扇の換気からとなります。日本建材・住宅設備産業協会 参考文献1)の試算では、窓などの開口部から、冬の暖房時は58%の割合で熱が流出し、夏の冷房時(昼)は73%の割合で熱が入って来るとなっている。ただし、試算は、戸建ての住宅の例と思われる。断熱ガラスメーカー 参考文献2)の試算では、冷暖房費を約40%カット(金額約3.6万円弱/年)出来るとしている。但し、冬の暖房には石油を使っていると仮定してます。

 窓の断熱性能を改善した場合としない場合の効果の試算をして、両者の比較をしてみます。気象庁の気温などのデータベース 参考文献3)を活用にすると、毎時の外気の気温と暖房/冷房の設定温度との差や冷暖房が必要な時間数が計算できます。
計算の条件:
・断熱性を改善しないガラスの例:1枚ガラスの断熱性能:6.0W/(m2K)
・採用したLow-E複層ガラス窓の断熱性能:1.4W/(m2K)
・窓の面積:3.63mWx1.92mH=7.0m2

 先の気象庁データベースを使って、5時から8時と17時から24時の間で冷暖房を使うことを想定し、設定温度との差平均と暖房・冷房時間をざっくりと計算してみました(表計算ソフトを使用)。
・温度差:夏季 室内温度26℃と外気の平均温度差=2.2℃、冷房の総時間数=700時間
     冬季 室内温度22℃と外気の平均気温差=15.2℃、暖房の総時間数=1,440時間
注意:推奨設定温度は暖房:20℃、冷房:28℃となっているが、(温度計の精度の問題もあり)+2℃、-2℃としました

⇒省エネ効果 夏季:(6.0-1.4)x7m2x2.2℃x700時間/1000=50kWh
       冬季:(6.0-1.4)x7m2x15.2℃x1,440時間/1000=705kWh 
       ⇒年間で755kWhの省エネとなる計算です。
⇒暖房を全部電気ヒータで行っているなら、冬季の電気代は累計で2万円程度安くなります。
エアコンで冷暖房している場合、エアコンのエネルギー効率は良く、効果は上記数値のエネルギー消費効率係数分の1程度と小さくなります
⇒家庭用エアコンの効率(APF:通年エネルギー消費効率) 参考文献3)は現状では6を超えている。したがって、最新のエアコンで冷暖房をすると、省エネ効果は約126kWh、経済効果は3,400円程度と小さくなります

 先のメーカの言う冷暖房費を約40%カットは、窓の影響だけを考えて(6.0-1.4)/6=0.6に日本建材・住宅設備産業協会の窓の熱の流出量(58+73)/2=65.5%を掛けると、39.3%とほぼ一致しています。しかし、経済効果は随分違って見えます。昼間に自宅に居て、かつ、戸建てのように窓の数が多くかつ面積が広い場合と、角部屋でない集合住宅の私の試算とではかなり違って当然と考えます。結論としては、住宅の断熱化をすると、しない場合よりは省エネ効果が出るのは明白です。断熱化の投資を回収するは、かなり時間が掛かりそうです。先のメーカの例でも、10m2の断熱ガラスを導入すると10年近く掛かることになります。

 新築、改築するなら、省エネを考えて、複層ガラスの断熱性能の優れた窓を採用し、戸建て住宅なら、更に、屋根、壁および床の断熱の強化も行うと良いでしょう。また、DIYで窓の断熱化を実行するなら、樹脂窓が安価で選択肢になるかと思います。

参考文献1) 日本建材・住宅設備産業協会
http://www.kensankyo.org/syoene/qanda/mado/a_9.html
参考文献2)断熱ガラスメーカーの試算の例
http://shinku-glass.jp/
参考文献3) 気象庁
https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php?prec_no=44&block_no=47662&year=2018&month=08&day=31&view=p1
参考文献4) ヒートポンプ・蓄熱センター
http://www.hptcj.or.jp/study/tabid/104/Default.aspx