LED照明とポストLED

まとめ
◇LED照明は普及の真っ只中ですが、照明技術はまだまだ進歩し続けます
◇曲げることが可能なOLED(有機EL)や指向性の強いLD(レーザー・ダイオード)照明が次世代照明として登場して来ると予想されています

 今回は家庭の「明かり」などの一般照明を取り上げます。LED照明(発光ダイオード照明)の普及は加速しています。新しい照明器具は全てLED照明に切り替わった感があります。今回は、LED照明の情報に加えて、ポストLED照明(LED照明の後の照明技術)について考えてみます。

照明の歴史

 人類の最初の「明かり」は太陽です(ここでは、第一世代とします)。太陽の内部では水素H2からヘリウムHeが生成する核融合が起き、表面温度は約5,800K(絶対温度ケルビン、℃換算すると約5,530℃)となり、地球に可視光を放射しています。第二世代の明かりは燃料を燃焼して得られました。明かり用の燃料として、木材、菜種油、蝋、石油、ガスなどが使われました。物体を高温に加熱することで可視光と熱線の両方が出て来ますが、(目で見える光)可視光のみが明かりとして利用されます。第三世代では、エネルギーとして電気が使われるようになりました。第三世代の最初の明かりは白熱電球です。白熱電球では、真空にした後、ガスを少量添加したガラス球の中に導電性のフィラメントが収められています。フィラメントに電流を流すことで、加熱して、フィラメント温度を2,000~3,000Kの高温に保ち、明かりを得ています。その意味では、白熱電球は、第二世代の高温の物体から可視光を得るという原理を踏襲し、エネルギー源を燃料から電気エネルギーに替えただけでした。

 電気エネルギーを利用する第三世代の明かりになって、エネルギー変換効率、つまり、投入したエネルギーの内、どれだけが明かりに利用されるかが重要となってきました。白熱電球のエネルギー変換効率は10%程度でした。放電現象により明かりを取り出す蛍光灯では、エネルギー変換効率は2倍の20%に改善されました。更に、エネルギー変換効率の向上が追求され、半導体素子のLED(発光ダイオード) 参考1)が発明されました。LED(発光ダイオード)のエネルギー変換効率は大幅に改善され30~50% 参考2)となっています。照明の発展はLED(発光ダイオード)で終わるのでしょうか? いえ、まだまだ照明技術は進化し続けます。

LEDとは

 LEDとは、Light=“光を”、 Emitting=“放射する” 、Diode=“PN接合の半導体=ダイオード” のそれぞれ3つの頭文字を結合したもので、”単にLED又は発光ダイオード”と呼ばれています。光の三原色である赤、緑、青の内、青色LEDの開発が最も困難で、この開発がLED照明の実現には鍵でした。2014年のノーベル物理学を受賞した3名の日本人科学者:赤崎勇氏、天野浩氏および中村修二氏などの貢献で青色LEDが開発されました。

※LEDは直流動作の半導体素子です。したがい、印加する電圧には+/-の極性があります。また、印加電圧は約1.8~3.2Vの範囲にあり、LEDの種類によって異なります。

 LEDを利用したLED照明には次の様な特長があります。省エネと長寿命の点からLED照明はエコな製品です。また、紫外線や熱線による劣化も抑えられので用途が拡大します。

LED照明の特長
 ①高効率で省エネ効果が期待できる
 ②蛍光灯と比べても2-3倍の長寿命である
 ③紫外線(可視光以外の放射がほとんどない)による劣化が起こりにくい
 ④熱線も少なく、熱劣化の心配される箇所にも使える
 ⑤小型軽量なので照明器具設計の自由度がます

 昼間の日光の色:白色光(色の感覚が無い光)の作り方は幾つかあります。基本は、光の3原色である赤色R、緑色Gおよび青色Bの光を組み合わせて白色光を作ります。R、GおよびBの3種のLEDを使う方法および1つの青色LEDまたは近紫外LEDと蛍光体を組み合わせる方法があります。一般的な照明には青色LEDと黄色蛍光体の組み合わせ(c)が使われているようです。

白色光の作り方 参考3)
(a)赤色R、緑色G、および青色Bの3種類のLED光を混合
(b)近紫外線/紫色LED光と赤色、緑色および青色の蛍光体を組み合わせて出て来た励起光を混合
(c)青色LED光と黄色蛍光体(青色の補色)からの励起光を混合
(d)青色LED光と赤と緑蛍光体からの励起光を混合

LED電球化

 使用中の電灯器具を使い続け、電球だけをLED電球に交換することを前提にした情報を述べます。ただし、蛍光灯に関しては、LED照明機器の価格が下がった現在では、機器ごとLED機器へ交換するのも選択肢になります。

関連記事情報:「省エネのために、白熱電球や蛍光灯は発光ダイオード照明(LED照明)に替えよう」もご参考にして頂ければと思います。
https://green-ez1.com/2019/08/28/replacement-to-led-lighting/

注意:ここで述べる情報は完全でない可能性があります。また、安全性についても十分検討されてない可能性があります。したがって、LED電球に交換する決定や作業に関して、全て自己責任でお願い致します。

 白熱電球の代替品のLED電球は、白熱電球のように40W、60Wおよび100Wなどと区分けが十分なされていなく、各社で明るさ(ルーメンlm数値)の違うものもあります。パッケージを見て、xxルーメンlm、40W相当などと書かれている箇所を見つけて電球を選ぶことになります。同じメーカならルーメンlmの値が小さい方が安価になっています。注意点は、同じ口金サイズでも、メーカーによって電球の大きさ(直径と長さ)や重量が違うことです。大きなサイズを選ぶと取り付け出来なかったり、はみ出したりします。明るさと物理形状は業界で統一して欲しいものです。

注意:ダウンライト(右側)には、通常の電球ではなく反射板がついたレフ球を使うべきと思います。レフ球形は先端が平坦で(そのため長さが短く)天井から飛び出しません。レフ球は現在ではリーズナブルな価格となっています。

 電球の口金については、E17(小さい方)あるいはE26(大きい方)の2種類が一般的です。日本で販売されている多くのLED電球は、電球の内部で交流から直流に変換するかつ電圧を降圧する回路が内臓されていて、100V交流対応となっています。人感センサー付きLED電球の市場に大手メーカーも参入して来ています。これは、人などの動きを感知するとスイッチが自動で入る電球です。玄関の照明や消し忘れ対策に活用できます。

 蛍光灯の代替LED電球は、従来と同様に、丸型と直管型があります。丸型蛍光灯の場合は、2本を1組として使うことが多いと思いますが、LED電球では細め形状の1本に集約されています。使用中の照明器具の電源コネクタを使います。ただし、グロースターターや安定器を取り除く、あるいは機能を使わないで使用します詳しくは購入したLED電球の取説または注意事項などを参照して安全性を確保して下さい

 直管型蛍光灯には、安定器、電子式安定器、HF/ラピッドスタート式、グロースターター式対応など、種類が多くあり、対応表を見ながらLED電球を決定することになります。グロースターター式以外では安定器などを取り外す工事が必要などとLED電球の箱などに記載されています。安定器などを取り外す工事には電気工事士の免許が必須です一般家庭では、グロースターター式の蛍光灯以外のLED電球の採用はハードルが高い状況です。直管型LED電球の口金や管の直径や長さなどの物理形状は蛍光灯と互換性があります。

LED化の効果

 白熱電球と蛍光灯をLEDに交換した場合の期待効果について述べます。LED電球の寿命は約40,000時間以上であるのに対して、白熱電球と蛍光灯のそれは、それぞれ、1,000~2,000時間、10,000~最新のもので20,000時間程度です。したがって、LEDを採用すると、電球の交換頻度が大幅に減少します。高所など交換が困難な場所の照明にもLEDは適しています。LEDの電力消費は白熱電球の1/10以下、蛍光灯の1/2程度と考えておけばよいでしょう。LED照明は省エネや環境性に優れています。

ポストLED照明

 発光ダイオード(LED)の次の照明技術は何になるのでしょうか? ポストLEDの候補としては、OLED(或は有機ELと呼ばれることもあります) 参考4)とレーザー・ダイオード(LD)が挙げられます。OLEDは有機材料の半導体で作られるLEDです。材料をシート状に重ね塗布して半導体を作ります。そのため、平面上の光源となり薄くて軽い、拡散光で低輝度なのでまぶしくない、放熱しやすいなど、OLEDにはLEDにはない特長を有していますが、私は、OLEDは一部の照明には使われると推定しますが、全面的に、LEDを置き換えるとは考えていません。レーザーダイオード(LD)の方がインパクトがあると考えています。LDは、LEDと同じく無機材料を使用した半導体ダイオードですが、光を発生させる部分の他に光を増幅させる発振器が備わっています。LD光は指向性が高く、直進する、光の色が交じりのない単色である、さらに可干渉性(コーヒーレンス)が特長 参考6)です。これらから、LD光は、必要な場所だけを選択的に照明するのに最適です 参考5)。その効果は、1/30の省電力化が可能と見積もられています。さらに、照明と高速データ通信の融合も可能です。一般照明から離れますが、車のヘッドライト、フロントガラスをディスプレイにするヘッドアップディスプレイ(HUD)、小型のプロジェクターにLDを使う強いニーズがあります。このような用途でLDの採用が進み、その結果、価格の低下が進み、一般照明にも広がる可能性があると思っています。

参考文献

参考1)
https://www2.panasonic.biz/ls/lighting/led/led/principle/

参考2)
https://www.otsuka-shokai.co.jp/products/led/knowledge/conversion-efficiency.html

参考3)
https://www.tlt.co.jp/tlt/lighting_design/proposal/led_basics/led_w_emission.htm

参考4)
https://www.kanekaoled.jp/index.html

参考5)
http://www.nikkei-events.jp/led-sympo2017/pdf/yamamoto.pdf

参考6)
https://www.keyence.co.jp/ss/products/marker/lasermarker/basics/principle.jsp