消費電力をモニター

まとめ
◇M5Stackと電流クランプを用いて家庭用単相3線式100V/200V受電に対応した電力計を作製した
◇この電力計は瞬時の消費電力モニターが可能で、電力の削減に役立つ
◇瞬時の消費電力をモニターすると居住者の動作など(例えば、料理中など)が読み取れる
◇プライバシー保護の観点から、ネット接続された電力モニターのハッキング防止策が必須となる

  日本の電力の80%は化石燃料から作られている。したがい、電力を効率的に使うことは温室効果ガス(GHG)の削減にも役立ちます。今回は使用電力をモニターすることがテーマです。出来るだけ安く作るために電子工作をすることにしました。

注意:ここで公開する情報は安全性を保障しておりません。全てはご自身の責任で行ってください。

家庭の電力の受電

 最近の家庭用の電力は100Vと200Vの両方が使えるようになっています。大型エアコン、IH調理器、エコキュート(湯沸し器)など、消費電力が大きい機器は200V系に接続しています。電灯その他機器は100V系となっています。したがって、家庭用受電方式は、100V系と200V系の両方が使える単相3線式100V/200V受電 文献1)が主流となっています。

電力モニターの製作

 電力モニターには既製品が利用できますがかなり高価です。電力の時間変化を追うためにはSDカードなどに記録する必要があります。データ記録できるクランプメーターは安価なものでも2-3万円程度します。また、単相3線式200Vの電力測定には2台必要となります。今回は電子工作して材料費約5千円で作ります。

 交流の電力は、正確には、実効電流x実効電圧x力率で計算されます。簡易的には電流のみ測定して算出します。電圧は100Vあるいは200Vとし一定、力率も一定と仮定しています。これでも電力の使用状況をモニターするには十分だと推定します。一方、電力の使用状態を詳しく知るために、瞬時の電力(今回は約10秒の間隔)を計測するようにしています。

 出力非干渉AC電流トランス(クランプ式電流センサー)で電線を挟みます。電線に電流が流れると電流に比例した電圧がクランプ式電流センサーに発生します。この電圧をArduinoボードのAD(アナログ-デジタル)変換器に接続して電流値を測定します。Arduinoボードに書き込んだプログラムで消費電力を計算し、出力します。今回は、Arduinoボードとして、ディスプレイ、SDカード読込・記録装置、WiFiカードを搭載したM5Stackを使いました。

 当方のM5Stackは200mV以下ではAD変換器のリニアリティー(入力に対する読み値の直線性)が良くなかったので、3.3V/2=1.65Vを中心に、クランプ式電流センサーを動作させました(回路図1)。100V系と200V系の両方に対応するために、クランプ式電流センサーを2個同時に使います。Arduinoのプログラムは 文献2)と文献3)を参考にしてM5Stackに移植しました。今回はSDカードには記録しないでAmbientと言うクラウドにデータを送信してグラフ化しました。データもCVSフォーマットでダウンロード出来ます。

クランプ式電流センサー周辺の回路図

電力モニターの結果

 約10秒間隔で消費電力をモニターしています。今の季節はエアコン、床暖房を使用していません。通常は、電灯やコンセントに繋いだ機器の電力消費が中心でベースの電力値は200-300W程度となっています。IH調理器、換気扇などを使うと瞬時に電力は跳ね上がります。エコキュートは早朝の3時ごろにお湯を沸かしているようです。瞬時の電力消費の変化を詳しく観察していると生活の状況が丸見えになることが分かりました。洗面所の使用、洗濯機の使用などが瞬時の電力消費で推定されます。したがって、電力モニターがハッキングされると大変のことになると思われます。再生可能エネルギーの導入などに伴ってスマートメーターの導入が加速されている様ですがハッキング対策が必須です。

 一般にはエアコンの方が床暖房(ヒーター)より効率的な筈ですが、数値で確認したい。エネルギー損失が多い換気についても、最適な方法を検討したい。電力モニターを継続しかつデータの蓄積を行うことで、今後の電力の削減に役立てたいと考えています。

取り付けたクランプ式電流センサー
(上部の青い部品)
電力消費モニター結果
オレンジ色:クランプ#1、青色:クランプ#2で測定した電力(Wh)
灰色は合計電力

参考文献
文献1)
http://www.tepco.co.jp/pg/consignment/for-general/basic-knowledge/monophase.html
文献2)
http://tyk-systems.com/PowerMeasure/PowerProgram.html
文献3)
https://ambidata.io/samples/m5stack/m5_powermonitor/