コストに見合う太陽光発電の計画#1

今回のテーマはコストに見合う太陽光発電所の作り方を検討します。工事費が高止まりしていますので、DIYによる発電所を構想します。合計2回の連載を予定しています。第1回目はソーラーカーポートです。

はじめに

再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT) 参考1)は2012年度から始まっています。個人で導入できる再エネ発電システムはほぼ太陽光発電に限られると思います。発電設備の導入の拡大に伴い、買取価格は年々低下しています。2021年の太陽光発電の買取価格は、10kW未満:19円(税込)、10kW以上50kW未満:12円+消費税などとなっています。この買取価格から逆算して、FIT制度の下で売電により、投資した太陽光発電設備を10年間で回収する 注参照)には、設備投資は1kWx1100時間/年x10年x19円=約21万円/kWとなります。10kW以上50kW未満の場合は、約14.5万円/KWとなります。kW単価がこれらの価格以下で買えるなら問題ありませんが、かなり難しいと考えています。調達価格等算定委員会の報告によると2020 年の住宅用太陽光発電のシステム費用の平均値は28.6万円/kW(参考2)P47に記載)とのことです。2021年度は27.5 万円/kWまで低下すると予想されています。

住宅用太陽光発電設備のキットなら約10万円/kWで入手可能です。しかし、工務店に工事をしてもらうと30万円/kWレベルになってしまうのが実情です。これでは二酸化炭素の排出量は削減できるが経済的なメリットはありません。

注意:①設備費の回収期間を10年としている理由は運転・維持費、保険などのその他の費用も発生するためです。②10kW未満のFIT買取期間は10年となっています。10kW以上では20年です。③住宅用太陽光発電のシステムは数kWあれば十分と考えています。

個人の住宅

コストに見合う太陽光発電所

自宅に太陽光発電設備を未だ導入していないなら新たに設置するのも良いでしょう。但し、先に述べた様にkW単価を約20.9万円以下で工務店に任せて導入するのは非常に難しいと推定されます。そこで、コストに見合うDIY太陽光発電所の構想を練ることにしました。一般に2階建てなら屋根は5m以上の高い位置にあり、また勾配もかなりきつくなっています。したがって、転落事故を起こしたら命の危険がありますので自分で屋根への設置は断念することにしました。最近ではソーラーカーポートと言う発電システムも利用できますがこちらも既存品ではコストに見合いません。
注意:太陽光発電システムの電気工事には電気工事士2種の資格が必要です

戸建て住宅の多くにはカーポートが設置されていますが、一般には樹脂製の屋根かつ支柱が片側となっているため、太陽電池パネルの重量を支えられないし、吹上る強風に耐えられないと推定されます。近所のカーポートの中には太陽電池パネルを積載できそうなものもありました。

ソーラーカーポート発電所構想

土地に余裕のあるのが条件で、既成品のカーポートを使った太陽光発電所を構想します。耐荷重かつ耐風圧のあるカーポートを選択し、設置は業者にお願いすることにします。カーポートにコストが掛かるので発電所の利用方法も検討します。発電した電気は出来るだけ単価の高い自家消費に回します。セキスイハイムの戸建て住宅のデータ 参考3)を参考に太陽電太陽光発電からの自家消費電力を1,700kWh/年とします。家庭での消費電力合計は約7,000kWh/年となっていますので、約76%の電気は電力会社などからの購入となる計算です。晴天時の昼間に余剰電力を販売する一方、発電しない夜間や発電電力が不十分な降雨・降雪時には電力会社などから購入することになります。余剰電力を電池などに蓄え、発電電力が不足する時に使う方法もありますが、現時点ではコストに合いません。家電込みのCO2排出量をネットゼロにするには約6kWの太陽電池が必要となります。

カーポートの選択
面積約25m2の車2台用のカーポートを想定します。台風などの強風に耐える構造のものを選びます。さらに、太陽電池のパネルは1枚20kg(14kg/m2)程度でかつ降雪時の耐荷重性が必要となります。私の住む地域は降雪がほとんどない場所ですが、耐荷重性のために、耐積雪1.0mのものを選びます。屋根は太陽電池が載せやすいガルバリウム鋼板のものを選びました。屋根の面積は横幅 5.5m、奥行 5.4mと近正方形になっています。高さは約2.3mです。カーポート工事は土木工事となるので業者にお願いすることにします。本体と工事込みで車2台用のカーポート建設代は約61万円となります。

発電量を最大化するために、太陽電池パネルは、太陽に向け、設置する場所の緯度と同程度傾斜させて設置します。一方、カーポートの屋根は雨水を流すために数度の傾きとなているだけほぼ水平です。斜面日射量の傾斜角依存性をシミュレーション 参考4)しました(図1)。斜面日射量は傾斜角30°~40°付近でピークとなっています。水平面(0°)の日射量は最適な傾斜角で設置した場合の約87%と低くなります(つまり、それだけ発電量が低下します)。毎月の日射量の変化もシミュレーション 参考4)しました(図2)。傾斜角30°と水平面(0°)を比べると、水平設置の日射量は冬季で低下が大ききいことが分かります。

注意:車2台用のカーポートは10m2を超えるため、建築確認申請が必要になるそうです。事前に所轄の自治体に問い合わせるのが賢明と思います。

図1

図2

太陽光発電システム
発電量を出来るだけ大きくするために、変換効率の良い太陽電池パネルを選びます。パネルはサイズ:156mm×156mm、出力:320Wのものを選びました。重量は18.2kgとなっています。カーポートの屋根に直列7x並列2の合計14枚のパネルを配置します。レイアウト例を図3に示しています。公称出力は14x320W=4.48kWとなります。水平に設置することで発電量が低下することを考慮して、予想発電量は4,656kWhと見積もりました

発電システムの部品と価格を一覧(表1)にしました。合計金額は50万円程度と見積もりました。発電システムのkW単価は11.2万円となりましたが、もっと安価な部品を選べば10万円以下も可能です太陽電池パネルで発電した電力を接続箱経由でパワーコンディショナー(4kW)に接続します。パワーコンディショナーで直流を家庭用の交流(交流200V 単相3線式)に変換して電力配電網と繋ぎます。

表1

図3 太陽電池パネルのレイアウト

収支計画

発電した電力の配分例を表2に示しています。年間の消費電力:7,000kWhの約70%を導入した太陽光発電所の発電で賄えます。発電所を作ったことによる経済的な効果は自家消費分:1,700kWh/年x26.27円/kWh=44,659円/年と売電分:2,900kWh/年x19.0円/kWh=55,100円/年となります。(カーポートの利用価値は無視して、)年度の経済効果は約10万円となります。ソーラーカーポート発電所の見積もり総額が117万円でしたので、回収期間は約12年になります。

晴れの日で発電量が大きい日に、消費電力の多い湯沸に電力を優先的使うと更に経済効果が向上します。電気給湯器:エコキュート1台当たりの蓄熱エネルギーは約14kWhであるので、必要な電気エネルギーは、性能係数を2.2と仮定すると、14/2.2=6.3kWh/日となる。十分な発電電力が得られる日を全体の50%と仮定すると、6.3×0.5=約3kWh/日と見積もれる。この様に運用することで、自家消費分を約1,000kWh/年増やせる可能性がある。この場合の経済効果は、自家消費分:2,700kWh/年x26.27円/kWh+売電分:1,900kWh/年x19円/kWh=10.7万円/年と増加します。更にソーラーカーポートのコストダウンも図り、何とか10年の回収を目指したいと考えています。

項目電力量(kWh/年)単価(円/kWh)備考
想定発電量4,600
内、自家消費電力1,70026.27
内、売電電力2,90019.0FIT買取価格
売って買い戻す電力量
総消費電力7,000
不足電力2,40026.27「7,000-4,600」から計算
表2 発電力の配分

【参考資料】
参考1)FIT制度
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/fit_kakaku.html

参考2)太陽光発電のコスト情報
https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/067_01_00.pdf

参考3)セキスイハイムの情報
https://www.sekisuiheim.com/info/press/20180313.html

参考4)日射量のシミュレーション
https://appww2.infoc.nedo.go.jp/appww/index.html