二酸化炭素CO2排出量の少ない車は?(地球温暖化に対してどの車が良いのか?)

まとめ
◇地球温暖化防止の観点で判断すると、現時点では、電気自動車とハイブリッド自動車が好ましい
◇将来、再生可能エネルギーによる創エネが進展すると、電気自動車が直接恩恵を受け、もっとも二酸化炭素の排出量が少なくなると見込まれる
◇燃料電池車は、水素社会(エネルギー源を、化石燃料から再生可能エネルギーにより創られた水素に転換)が到来しないと、本領が発揮できない

プラモデル車

エコカーの種類

 今回の話題は、どの種類の車がエコなのか?、言い換えると、どの種類の自動車が二酸化炭素CO2の排出量が少ないのか?です。最近では、ガソリン自動車、ディーゼル自動車、ハイブリッド(電気)自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)に加えて、電気自動車(EV:Electric Vehicle)、プラグイン・ハイブリッド自動車(PHEV:Plug-in Hybrid Vehicle)、燃料電池車(FCV:Fuel Cell Vehicle)と色んな種類の自動車 参考資料1)が選べるようになって来ましたが、どの種類の車を選びますか? 燃費(または、走行コスト)を気にされる方は多いと思いますが、地球温暖化防止の観点で比べてみては如何でしょうか? 参考資料2) 今回は、車の種類と走行距離1km当たりの二酸化炭素CO2の排出量を比べてみます。LCA(life cycle assessment)と言われているように、つまり、自動車の部品製造、組立、人や荷物を運搬、メンテナンス、廃棄に至るまでの総合的な二酸化炭素排出量を、廃車までに走行した距離で割って、走行距離1km当たりの二酸化炭素CO2排出量を出すのが精密な計算の方法です。しかし、自動車メーカでもなければ、各自動車を製造するまでの二酸化炭素CO2量やメンテナンス、具体的には交換部品の製造、運搬までの二酸化炭素CO2排出量などは分かりません。したがって、ここでは、燃料消費率から走行1km当たりの二酸化炭素排出量を見積もって比較しています。数値は、車の種類に伴うエネルギー源(燃料)の違い 参考資料3)、エネルギー源の入手方法、車の性能である単位エネルギー源(燃料)当たりの走行距離の違いに依存します。これでも、大きな傾向は分かると考えています。

エコカーの比較

 まず、比較表を見てみましょう。電気自動車とハイブリッド自動車の二酸化炭素CO2の排出量が約60【g-CO2/km】と少ないことが目を引きます。この数値は、ガソリン車やディーゼル車の60%程度です。一方、エコ自動車として国が推進している、燃料電池自動車の数値がガソリン車の二酸化炭素CO2の排出量の約140%と多いのには驚きます。これはどうしてでしょうか? 先ずは、燃料電池自動車は未だ歴史が浅く、開発途上で燃費の改善が途上であること。燃料電池自動車の燃料の水素ガスが、現状、化石燃料の都市ガスつまり主要な成分:メタンガスCH4から作られている 参考資料5)からです。その上に、水素ガスを液体化、貯蔵、運搬、再ガス化して車に充填する方式なので更にエネルギーを必要としているからです。

表内のテキスト【水素 電気 ガソリン 軽油 都市ガス改質 太陽光発電で創る 太陽光発電 着床式風力発電 浮体式風力発電 石油由来 CO2排出 kg-CO2/Nm3-H2 kg-CO2/kWh tCO2/kl 燃料消費量/km m3-H2/km Wh/km km/L 車種 走行モード 排出量 g-CO2/km 車からの排出ガス H2O CO2、窒化物 炭化物 PM JC08 WLTC】

車走行時の二酸化炭素CO2の排出量比較

再生可能エネルギー100%の世界と水素社会

 将来、再生可能エネルギーの利用が更に進んで、電力の再生可能エネルギー率100%になった場合はどうなるのでしょうか? 緑色の部分に示しています。この場合、発電による二酸化炭素CO2の発生はほとんどなくなります。この場合は、電気自動車が最大の恩恵を受け、二酸化炭素CO2の排出量は、3~12【g-CO2/km】と現在より、1桁小さくなります。一方、燃料電池自動車の方は、水素H2製造時の二酸化炭素CO2の排出はなくなりますが、輸送、貯蔵、充填などは未だ残りますので、電気自動車のようには二酸化炭素CO2の排出量は1桁には減りません。

 では、なぜ国は水素燃料を推進しているのでしょうか? 参考資料4) 国内の電力を再生可能エネルギーだけで補うのは限界があります。そこで、不足分を海外で再生可能エネルギーから創られた水素ガスを輸入し、発電に使うことで、100%再生可能エネルギーによる電力供給を達成しようとしているからです。二次電池などと同様に、電力を水素ガスに転換して蓄えて(貯蔵する)、必要な時は使うことで水素ガスを電力貯蔵の手段とする。化石燃料である都市ガス、ガソリンなどを水素ガスで置き換え、将来的に化石燃料を全てなくす。また、水素は、化石燃料とは違い、燃やしても水蒸気しか排出されませので究極なクリーンなエネルギーです。このようにエネルギー源を根本から転換する計画が「水素社会」と想定しています。水素社会が実現すると、現在のガソリン車と同様に、数分で水素H2燃料を自動車に充填でき、走行距離も長くなるので、燃料電池自動車の方が、電気自動車より好ましいと考える見方もあります。

1.東芝
https://toshiba.semicon-storage.com/jp/application/automotive/ecology/hev-ev.html
ハイブリッド(電気)自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)に加えて、電気自動車(EV:Electric Vehicle)、プラグイン・ハイブリッド自動車(PHEV:Plug-in Hybrid Vehicle)の構成図

2、経産省
http://www.mlit.go.jp/common/000989167.pdf
(まとめ年不明)二酸化炭素CO2の排出量の車種、車両重量、排気量および走行モードによる違いのデータ

3.燃料源からの二酸化炭素CO2排出量
https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy/suiso_nenryodenchi/co2free/pdf/012_01_00.pdf
第12回CO2フリー水素WG、様々な水素のCO2排出量/副生水素の取り扱い(P4)

https://ghg-santeikohyo.env.go.jp/files/calc/itiran2019.pdf
燃料の使用に関する排出係数(別表1×別表2×(44/12))(P53)

http://www.j-lpgas.gr.jp/nenten/data/co2_list.pdf
燃料の発熱量 CO2排出係数の一覧表

4.水素エネルギー関連
https://www.nedo.go.jp/library/suiso_ne_hakusyo.html
NEDO水素エネルギー白書
https://www.nedo.go.jp/content/100639759.pdf
表6-2 水素製造技術のまとめ (P103,)

5.メタンの水蒸気改質法
https://www.osakagas.co.jp/rd/fuelcell/pefc/reformed/steamref.html