二酸化炭素CO2の排出ゼロ(住宅のカーボンニュートラル)を達成す方法

まとめ
◇住宅をカーボンニュートラル(実質的に二酸化炭素CO2の排出ゼロ)にする方法は幾つかある。その中では、再生可能エネルギーを仲介する電力販売業者から購入するのが一番簡単である。
◇人間の全ての活動に対する「カーボンニュートラル」を達成するには、現状、個人で再生可能エネルギーに投資するしか選択肢はない。

カーボンニュートラルの必要性

人間は生きている限り二酸化炭素CO2を排出し続ける。人間が息をする、食事をする、運動する、移動する時には必ず直接的あるいは間接的に二酸化炭素CO2を排出を伴う。よって、人間の生=(イコール)二酸化炭素CO2の排出と言えると思います。したがい、住宅をカーボンニュートラルとするだけでは不十分で、カーボンポジティブまでしないと本当は大気中の二酸化炭素CO2濃度は下がらない。今回は、二酸化炭素CO2の排出が多い住宅のカーボンニュートラルにする方法を検討するがテーマです。

注意:「カーボンニュートラル」とは、ある環境の条件下で、排出される二酸化炭素の量と吸収される二酸化炭素の量が同じ量である状態のこと。排出量の方が多い場合を「カーボンネガティブ」、吸収量の方が多い場合を「カーボンポジティブ」と言います。

①再生可能エネルギーを買う

 企業向け二酸化炭素CO2の排出量取引や再生可能エネルギーの取引は以前から行われていました。最近になって、日本でも、ようやく個人が再生可能エネルギーを電力仲介業者から買える 注意1)ようになりました。個人向け取引を行っている会社は複数社あります。仕組みは、再生可能エネルギーの仲介会社が、自社で創エネしたあるいは第三者から調達した再生可能エネルギー(電気)を個人に販売します。購入する再生可能エネルギーの割合は複数選択できます。各家庭で使う電力量の100%まで再生可能エネルギーを買うことも可能です。したがって、オール電化の住宅なら全て再生可能エネルギーで賄えます。ただし、ガスや灯油で使ったエネルギー分の回収は現時点では出来ないようです。
注意1:残念なことに、電力会社との現契約が「電化上手」や集合住宅の「一括購入契約」の場合は、電力仲介業者への切替が出来ないとのことです。

 「自然電力のでんき」のweb上で再生可能エネルギー購入のシミュレーションをしました。再生可能エネルギー100%で見積もりました。その結果を添付致します。住宅で使用する全エネルギーに対するカーボンニュートラルを達成し、かつ、電気料金が約9%削減できるとの結果でした。しかし、別の業者に聞いた話ですと、購入コストの低減は通常1%程度しかないとのことでした。

再生エネ100%の場合の料金見積

 次の再生可能エネルギーを自分で創る場合(創エネ)と比較すると、こちらは、業者に任せられるので手軽に、二酸化炭素CO2を減らせます。業者はコストを追求しますので、低コストの電力が手に入る可能性もあります。 実際、多くのケースで、家庭の電気代が少し減ると宣伝しています。再生可能エネルギーを買うことは、即ち、再生可能エネルギーを間接的に推進していることにもなります。

②個人で再生可能エネルギー発電所(太陽光発電所)を創る(創エネ)

 家庭で使う再生可能エネルギーの発電システムの選択肢は太陽光発電にほぼ絞られる。必要な発電容量は、家族構成やライフスタイルによりますが、少ない場合で5kW、多い場合で10kW程度必要になると推定される。高性能太陽電池パネルの場合でも、1kW当たり、設置面積は5m2必要となります。屋根に設置するなら南側の屋根の面積が5kWの場合で25m2、10kWの場合で50m2は最低必要となります。その他、パワコン、制御機器などの地上あるいは屋内スペースも必要になります。この様に設置スペースを確保するのが第一段です。経産省のデータ 参考資料1)によると、家庭用のシステム価格の2018年度の平均値が既築35.8万円/kW(新築32.2万円)となっていますので、投資額は、5kWの場合で179万円、10kWの場合で358万円程度です。税金、メンテナンスなどのランニングコスト(運転・維持費)を無視し、電力会社から電気を買わなかったことによる費用(27円/kWh)で投資金額を回収する条件下の計算では、12年の回収期間が必要となります。システム導入コストが先の条件通りなら、実際は、投資額を回収するには15年程度かかるのではと推定します。10-50kWの小型産業用のシステム平均コストは27.1万円/kWとのことなので、庭などに設置するスペースを確保できれば、導入コストを更に下げれる可能性があります。投資の回収は長期となりますが、ガスや灯油まで含めた家庭からのネットの二酸化炭素CO2の排出を+/-ゼロ、つまりカーボンニュートラル、更には、カーボンポジティブまでも達成することが可能です。

 実は、私も、2013年の太陽電池バブル真っ最中に、100kWレベルの太陽電池発電所を創ること(創エネ)を検討しました。メガソーラーを2機導入した経験から発電システムのコストが重要だと考えていました。面積約1,000m2の安価な土地探しと並行して、発電量が50kWを超えると必要な免許:設備管理者となるための電検3種および工事を行うための電気工事士免許の取得を進めていました。鉄丸パイプを組み合わせた架台(太陽電池を取り付ける台)の設置と電気配線を自分で行い、コストを抑えて、25万円/kW以下でシステムを作る計画を立てました。しかし、バブル状況下、良い土地を入手来ませんでしたので最終的には断念しました。

 2019/08/30日付の日経新聞によりますと、発電事業者が家庭や企業の屋根に無償で太陽電池を設置する代わりに、その電力を購入してもらうというビジネスモデルが国内でも始まると報じています。更に、発電設備は原則として10年後には無料で譲渡するとあります。自宅に無償で太陽光発電所が出来ることになりますが、これはどうゆうことでしょうか? 先の経産省のデータから既築のシステム最低価格は30万円/kWとなっているので、10年で回収するとすると、発電コストは27.3円/kWhとなり、個人が買う電力単価とほぼ同じです。これでは商売になりませんが、実は、我々が毎月電気料金に上乗せして支払っている再エネ発電賦課金(2.95円/kWh)を原資とする交付金が再生可能エネルギー購入業者に戻ってくるからです 参考資料2,3)。再生可能エネルギーの割合を20%とすると、賦課金単価2.95円/kWhの5倍=14.75円/kWh(全再生可能エネルギー1kWh当たりの平均金額)が業者に戻ってくるわけです。

左:洋上発電所(ドイツ) 右:道路沿いの太陽光発電所(スペイン)

③ZEH/ネット・ゼロ・エミッション・ハウスを新築する(改築もあり)

 新築するタイミングなら・ZEH/ネット・ゼロ・エミッション・ハウスが選択できます。ZEHハウスに住めば、カーボンニュートラルが達成できることになります。 

 経産省 参考資料4)のZEHの定義は、次のようになっています。「ZEH(ゼッチ)(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは、「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」です。」 要は、エネルギーの無駄をカッット(省エネ)した上で、太陽光発電などを導入(創エネ)してエネルギーの消費量と発電量をバランスさせるということです。オール電化の方が電力として一括してエネルギー消費が掴めるが、ZEHハウスにはガスを使う高効率給湯器も選択できるようになっています。この場合は、ガス消費量と電気消費量の合算と発電量との差を計算するマイコン制御装置(HEMSか?)が必要となると思われます。

④植樹して、木が成長したら炭を焼き、炭素として固定する

 親類が地方にお住まいで山林などの土地を所有されているなら、雑木林用のスペースが借りられるのではないでしょうか? 親類が居なくても、地方の雑木林は少額のお金で購入可能と思います。雑木林にはクヌギ、カシ、クリ、ナラ、ブナなどの木を植え、年に一度は見に行ったらどうでしょうか? クリの収穫や自然観察ができます。木が成長する間は、木は二酸化炭素を吸収してくれます。大きくなったら、翌年も芽が出るように根元近くで伐採(萌芽更新)して、木の幹を炭として焼きましょう。そして、二酸化炭素を炭として固定します。このようにしてもカーボンニュートラルは達成できます。必要な木材の量などに関しては、「植樹で大気中の二酸化炭素を減らそう(「カーボンポジティブ」への道)」をご参照下さい。

参考文献
1)日本の住宅用太陽光発電のコスト動向(システム費用の平均値の推移)
https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/044_02_00.pdf
2)2019年度の賦課金単価
https://www.meti.go.jp/press/2018/03/20190322007/20190322007.htmlhttps://www.meti.go.jp/press/2018/03/20190322007/20190322007.html
3) 固定価格買取制度
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/surcharge.html
4)ZEH(ゼッチ)(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/housing/index03.html