植樹で大気中の二酸化炭素を減らそう(「カーボンポジティブ」への道)

まとめ
◇庭に木を植え、大気中の二酸化炭素の増加速度を減らしましょう
◇木を伐採したら、燃やさない・捨てないで、木財として活用・保存を検討しましょう
◇大量の伐採木は、炭として炭素を固定出来ないか検討しましょう

植樹による炭素の固定

 戸建てに住み、庭が広くて木を植えるスペースがあれば植樹しましょう。木は光合成によって、葉の気孔から二酸化炭素を取り入れ、根から水を吸い上げ、葉緑素の働きと太陽の光エネルギーを利用して、ブドウ糖(グルコース)を作り酸素を放出します。生成されたブドウ糖を基にして樹体を形成するための成分のセルロース、ヘミセルロース、リグニンが作られ木が大きくなります 参考文献1)。木の元素構成は、炭素約50%、酸素約44%、水素約6%およびその他 参考文献2)となっています。 したがって、木は、植えられてから成長している間、大気中から二酸化酸素を吸収し、炭素として固定し、大気中の二酸化炭素を減らし続けてくれます

植栽

家庭からの二酸化炭素CO2の排出量の試算

 ここで、1つの試算をしてみましょう。一般家庭 参考文献3)の半分程度のエネルギー消費量、かつ電力で給湯まで必要なエネルギー全部を賄う(オール電化)、効率の良い家庭の二酸化炭素の排出量とこれとバランスする樹木量を計算してみます。

年間のエネルギー消費量(電力)   500kWh/月x12ヵ月x3.6MJ/kWh=21.6GJ
年間の二酸化炭素の排出量      500kWh/月x12ヵ月x0.462 kg-CO2/kWh 文献4)=2,772kg-CO2/年
 これを炭素に換算すると、    年間の二酸化炭素の排出量x12/(12+16×2) =756kg-C/年
したがって、年当たり、約3トンの二酸化炭素を排出していることになります。この家庭の排出した二酸化炭素を植えた木で全部回収する(カーボンニュートラルの考えでは)とするとどのくらいの木材の生産が必要なのでしょうか? 材木中の炭素量は約50%なので、必要は材木の重量は約2倍の1.5トンとなります。木材の比重の代表的な数値は、 およそ0.50~0.59なので、木材の体積に換算すると約3m3と計算されます。杉の植林の例から推察すると、これだけの量の材木を生産するには約260本の杉を育てることができる約1,700m2の山林が必要となります 参考文献5)。何れにしても膨大な広さの土地が必要となります。 参考までに太陽電池で全電力を賄う場合、約6kWの発電設備と約90m2の設置スペースが必要となります。

注意:「カーボンニュートラル」とは、ある環境の条件下で、排出される二酸化炭素の量と吸収される二酸化炭素の量が同じ量である状態のこと。排出量の方が多い場合を「カーボンネガティブ」、吸収量の方が多い場合を「カーボンポジティブ」と言います。

大きくなった木のエコな扱い方

 大きくなる庭木は、何れ切る時期を迎えます。私の場合をお話を致します。私は、郊外の戸建てを購入し、庭に木を植えました。北側の隣地側にモミノキ(ドイツトウヒ)、道路に面する南玄関の西側にはキンモクセイ、残った南面にはヒイラギを植えました。モミノキは一直線に空に向かってすくすくと伸び、キンモクセイは横に広がりながら成長して行きました。キンモクセイは枝打ちをして茂り方を調整しました。問題はモミノキです。植えてから真っすぐ伸びるので放置して20年近く経つと、背が高くなり過ぎ、私の手には負えなくなりました。また、隣接する家の方から夏にセミが寄り付いてうるさいから切って欲しいと言われていました。そこで家の転居・売却の際、モミノキを伐採することになりました。この様に庭木は定期的な剪定と何れは伐採が必要となります。剪定あるいは伐採された木材をどうすればエコなのでしょうか? 木材の活用方法は幾つか考えられます。

木の状態で活用する(建築材料、家具、置物、人形、飾り物など) 
 木を材料として活用すれば、炭素は木の中に固定され、二酸化炭素を発生しません。木材と言うよりは木財と言う方が適当なエコな方法です。しかし、保存する材木が増え続けると問題になりますね。
燃料として使う(燃やす)
 木をそのまま燃やす。あるいは、アルコールなどバイオ燃料に変えて最終的には燃焼させる場合です。この場合は、燃料の中の炭素を二酸化炭素に変えて、再度、大気中に放出します。この時点で木により二酸化炭素の吸収はなかったことになります。
木を捨て朽ちさせる、土に埋める
 一般には、有機物が分解されると、メタンガスが発生します 参考文献6)。メタンは、地球温暖化係数が二酸化炭素の25倍もあり、木が吸収した二酸化炭素の量より(二酸化炭素に換算して)多くの同ガスを排出する可能性があります。木材腐朽菌により木が腐り始め、シロアリが木材を食べ始めます。最終的には、嫌気性微生物により分解が進み、メタン、アンモニア、硫化水素などは発生するメカニズムです。どの様な条件下で多くのメタンガスが発生するのかを知りたくてweb検索して調べましたが、分かりませんでした。残念ですが宿題とさせて頂きます。
炭にして蓄える、土に埋める
 木材を酸素が少ない状態で焼いて、木炭に変えます。木炭の用途は種々ありますが、この場合は土に埋めてしまいます。大気中の二酸化炭素を取り出した後、安定な炭素(炭)として固定してしまう訳ですからこれが地球環境には一番良い方法と考えています。更に、二酸化炭素排出量より固定の方が多い「カーボンポジティブ」の状態を作り出せれば、大気の二酸化炭素を徐々に減らすことが出来ます

 私の田舎では晩秋に炭焼きをしていました。炭焼き窯からの煙で炭焼きの状況が推測されました。炭は主に七輪などの燃料として使っていました。電気やガス燃料に頼らない里山の生活の知恵です。クヌギが主な木の材料で締まった堅い炭を作っていました。萌芽更新となるように木を株から切っていました。春先には、また、幹に育つ枝が出てきます。里山のエコな暮らしですが、炭を燃料として使うと上記②と同じで、燃やした時点で木による二酸化炭素の吸収はなかったことになります。

街路樹の萌芽更新

参考文献
1) 森林総合研究所 https://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/kouho/mori/mori120/mori-120.html
2) 兵庫県立丹波年輪の里 http://nenrin.org/1_kiso/post_170.php
3)エネルギー消費量 41GJ/H21 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tikyuu/kaisai/dai06tyuuki/sankou1_1.pdf
4)東電 http://www.tepco.co.jp/corporateinfo/illustrated/environment/emissions-co2-j.html
5)千葉県森林研究所 https://www.pref.chiba.lg.jp/lab-nourin/nourin/documents/satoyamaguide705.pdf#search=%27%E6%9D%89+1%E6%9C%AC%E5%BD%93%E3%81%9F%E3%82%8A%E3%81%AE%E5%9C%9F%E5%9C%B0%E9%9D%A2%E7%A9%8D%27
6)江戸川河川事務所http://www.ktr.mlit.go.jp/edogawa/study/woodbook/woodbook/word03/sbbunkai.htm