海面水位の上昇の原因について

まとめ
◇IPPCによると、海面水位の上昇は、海水の熱膨張と氷塊(氷河・氷帽や極圏陸地の氷床)の融解が主因
◇当方の大まかな海水の熱膨張の寄与分の試算値は、IPPCの結果と比べると、かなり小さい

海面水位の上昇の原因

 海面水位の上昇についてもう少し、調査と試算を行いました。 海面水位は、地盤の変動、月や太陽の引力の日常的変化、潮流の流れや速度の変動、偏西風の向きと強さなどの自然変動の影響も受ける。したがって、真の海面水位の上昇を知るには、観測データから純粋な地球温暖化の要因分を取り出す必要がある 参考文献1)。 IPCC 第4次評価報告書によると、1961年から2003年間の海面上昇の主な要因として、 ①海水の熱膨張36% 、 ②氷河・氷帽の融解 45% 、 ③グリーンランド氷床の融解 6% 、④南極氷床の融解13% 注意1)の4つを挙げている。1993年から2003年の期間では、いずれの要因も海面水位上昇への寄与が増大し、特に海水の熱膨張の寄与が58%と顕著に大きくなる。
注意1:%数字は、上昇率を図より読み取り算出したもの)
注意2:氷帽(ひょうぼう)は高い山の頂上部の氷の塊などでその面積が5万km2未満である場合を言う。氷の塊が5万km2以上の場合を氷床と呼び区別される。

IPPC 第4次評価報告書(2007年)によると、海面水位の上昇は 20世紀を通じて0.17±0.05m 、気温の上昇は 1891年から2012年の122年間に100年あたり0.51℃ と見積もられた。

北斎の波

海面水位の上昇に対する海水温の熱膨張の寄与分の試算

海面水位の上昇の主原因と言われている、海水の熱膨張を自分でも試算して、検証してみたくなった。先ずは、データの収集を行った。
海水の基礎的情報】:
1.地球上の水の量は約14億km3で地球表面の70%を覆う。塩水97.5%、淡水2.5%の割合となっている。 氷河・氷山の量は淡水の約70%で、0.25億km3である  参考文献2)。 ⇒氷河・氷山が全部が融解し海洋に流れ出すとする単純計算では、海面水位は20mも上昇することになる。
2.海の深さの平均は約3,800mである。 深さとともに、太陽光が減衰するので、海水の温度は下がり、1,000mを超すと熱帯地方でも5℃以下になる。海水の深さに対する温度プロファイルの図も添付されている 参考文献3)。 
3.水の熱膨張率(注意:海水ではない)は、0℃:-0.06、10℃:0.09、20℃:0.2、30℃:0.29x10(-3)/℃となっている 参考文献4)。図示してみると4℃付近(密度が最大となる温度)で膨張率は0となっている。
4.IPCC第4次評価報告書 (2007年)によると、世界の年平均海面水温は、1891年から2012年の122年間に100年あたり0.51℃上昇した。

【試算の条件】: 
上記の海水の情報データなどから、見積もり条件を以下のように設定した。
①深さ1,000m以上は海水温が低くかつ膨張率も小さいので無視
②熱膨張率は10-20℃の範囲では、0.15x10(-3)/℃程度
③毎面水温の上昇は深さに関わらず、平均0.51℃と仮定

海面水位の上昇の見積もり結果:
1,000[m]x0.15x10(-3)[1/℃] x1/3(注意:体積から高さに換算)x0.51[℃] =2.6cm ⇒⇒IPPC 第4次評価報告書の結果の17cmの15%にしかならない。この値はIPPCによる1961年から2003年間の海水熱膨張の寄与分:36%の1/2以下と小さい。
⇒そこそこの試算結果と考えるか、あるいは、前提条件が計算が間違っていると考えるか。下記の参考にあるように、気象庁も、IPPCの結果の検証に苦労しているようなのでこれで良しとしました。

気象庁:日本沿岸の海面水位は様々な要因で変動しており、地球温暖化の影響がどの程度現れているかは明らかでない。地球温暖化に伴う海面水位の上昇を検出するためには、地盤変動の影響も含めて更なる調査が必要である。 参考文献1より引用)。

参考文献1 気象庁 http://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/shindan/sougou/html_vol2/1_2_vol2.html#fig1_2-3.pnghttp://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/shindan/sougou/html_vol2/1_1_1_vol2.html海面水位変化の要因
参考文献2 環境省  https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/zu/h22/html/hj10010401.html
参考文献3 東大 大気海洋研究所 https://www.aori.u-tokyo.ac.jp/project/hadeep/knowledge.html#ds1
参考文献4 (株)社八光電機  https://www.hakko.co.jp/qa/qakit/html/h01030.htm