再生可能エネルギーと電力貯蔵システム
まとめ
◇環境エネルギー政策研究所によると、日本の2018年度の総発電量に対するRE(再生可能エネルギー)の割合が前年度から1ポイント増加して17.4%となった
◇REの拡大に伴い、VRE(変動性再生可能エネルギー:太陽光や風力)に特有な課題が生じてきた
◇VREは不安定で出力変動が大きいため、VRE発電単価に加えて、統合コストが追加される
◇REの導入拡大には、電力貯蔵システムの導入、余剰時のVREの出力抑制、柔軟性確保などの対応策が必要となってくる
はじめに
遅れていた日本でも、温室効果ガス(GHG)の排出がない太陽光発電や風力発電などの導入が進み、非化石燃料由来の電力が総電力需要の20%を超えてきました。九州や四国ではVRE(Variable Renewable Energy=変動性再生可能エネルギー:太陽光および風力)特有の問題も発生しています。RE(Renewable Energy=再生可能エネルギー)電力の導入を更に拡大するためには、季節や天候に依存して大きく変動するエネルギー、VREを使いこなすことが課題となってきます。解決手段の1つとなる電力貯蔵システムを今回のテーマとします。
日本の再生可能エネルギーの現状
環境エネルギー政策研究所 文献1)によると、2018年(暦年)の日本の再生可能エネルギーの割合は、前年度から1ポイント増加して17.4%と推計されている。種類別では、水力:7.8%、太陽光発電:6.5%、バイオマス:2.2%、風力:0.7%、地熱:0.2%の構成となっている。原子力発電は前年度から1.9ポイント増加して4.7%になった。したがい、化石燃料を消費しないエネルギーの割合は、22.1%となった。言い換えると化石燃料による火力発電の割合は、77.9%となる。 また、VRE(Variable Renewable Energy=変動性再生可能エネルギー:太陽光および風力)である、太陽光および風力の合計割合は2017年の6.3%から2018年の7.2%に増加した。
地域的に見ると、水力資源が豊富な北陸電力圏と東北電力圏で自然エネルギーの割合が約30%と大きい。一方、VRE(変動性再生可能エネルギー:太陽光および風力)の割合は四国電力および九州電力が約12%と高く、日本でもVREの制御の問題が生じている。四国電力圏では2018年5月の1時間値の最大で自然エネルギーが需要の100%を超えた。九州電力圏では2018年10月からVREの出力抑制が初めて実施された。VREエネルギーの量的拡大が遅れていた日本でも、VREエネルギー大量導入時の課題が散見される段階になってきた。したがって、日本もVREの本格的普及期が到来したと言えるでしょう。
VREエネルギー大量導入時の課題
IEE 文献2)によると、VRE発電単価は、最も条件の良い地域では既に火力を下回り(海外)、また少なくとも2050年までには多くの地域でそのような状況となるとの予測をしている。太陽光発電は太陽からの日射量に比例して発電する。したがい、夜間は発電しないし、雨の日や曇りの日には出力が桁違いに低下する。また、風力発電は、通常、夜間に停止することはないが、風の吹き具合に依存する。このようにVREは不安定で出力変動が大きいため、発電単価だけでなく、VRE増加に伴う電力安定化のための統合コストも加算する必要がある。具体的には、蓄電システムの導入、余剰時のVREの出力抑制、柔軟性確保のための追加的な費用が発生する。
VREの市場価値は、快晴の昼間や良好な風が広域で吹く場合には電力市場価格が極端に低くなる。「0」または「-」価格も成立するとのこと。VREの最適点を超えると、VRE同士の共食い効果が発生する。また、最悪ケースでは、電力供給途絶リスクもある。1年の内、1、2度、風力・太陽光の発電量が極めて小さくなる時期がある。水力も同じく、気象変動による降雨量の変化の影響を直接受ける。
みずほ情報総研 文献3)は住宅用太陽光発電 と蓄電池の併設による出力抑制の低減効果を シミュレーションモデルを用いて分析した。その結果、蓄電池無しでは、年間の出力 制御率は21.7%(発電機会損失)であるが、蓄電池を併設した場合には出力抑制率が4~8%改善することを確認している。
電力系統の安定化
機器の動作不良や停電の誘発を防ぎ、電力を安定的に供給するため、電力会社は、電力 の供給量と需要量をバランスさせて供給してる。電力品質は 文献4)、電圧、雷に起因する瞬時電圧低下、電圧変動、高調波電圧、周波数、停電の防止、(三相電力の相間)電圧不平衡などのパラメータ(変数)で管理される。電力会社は電力品質の維持の義務を負っている。
NEDO 文献5)によると、懸念される問題は、①太陽光発電では4~5月の快晴時の昼間、風力発電では冬期の電力需要の少ない夜間に余剰電力が発生する可能性、②みかけの需要の変動に対する対応力不足(ダックカーブ問題)、③周波数調整能力の不足などを想定している。電力供給社側の対応策としては、既存火力発電や水力発電等の集中型電源調整能力向上、広域連系、再生可能エネルギーの出力予想精度の向上、再生可能エネルギーの発電出力制御、電力貯蔵システム導入による需給調整などである。 需要家側では、蓄電池や電気自動車、変動する電力価格や報酬などに応じて需要家が自らの電力使用量を調整するデマンドレスポンス(DR: Demand Response) などの技術の導入が考えられる。
電力貯蔵システム
発電側、送電・配電側、需要家側に跨り利用可能な電力貯蔵システムをここでは取りあげる。電力貯蔵システムには、容量、需給調整時間、コストなどを比較 文献5)検討して、利用目的に最適な技術が選ばれる。蓄電池としては、レドックスフロー電池、NaS(ナトリウム・硫黄)電池およびリチウムイオン電池がある。蓄電池は、一般に、小・中規模の容量領域で早い応答が必要な用途に向く。また、充電・放電のサイクル効率も高い。電気自動車などの移動体用や小規模需要家用にはエネルギー密度や重量密度の点からリチウムイオン電池にほぼ限定される。従来から揚水式水力は容量の大きな電力貯蔵システムとして使われている。揚水式水力は、夜間の余剰電力を利用して下流の水を上流のダムに戻して貯めて、必要な時に使うことで電力貯蔵として機能する。水素化はサイクル効率がかなり低い。しかし、水素化は、他の技術にない長距離輸送が可能かつ長期保管が可能と言う特長を持ち、大規模容量域の電力貯蔵に使われることが想定されている。電気二重層キャパシタは小容量で早いレスポンスが必要な箇所用に向く。その他、圧縮空気貯蔵、液化空気貯蔵、フライホイール、超電導電力貯蔵などの電力貯蔵技術が検討されている。フライホイールは弾み車のことで、円柱状あるいは円盤状の重量物を回転させて機械的にエネルギーを蓄える貯蔵技術である。
文献
1)ISEP
https://www.isep.or.jp/archives/library/11784
2)IEEJ
https://eneken.ieej.or.jp/whatsnew_op/191015teireiken.html
3)みずほ情報総研
https://www.mizuho-ir.co.jp/publication/report/2019/mhir18_energy_01.html
4)電力中研
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieiej/25/10/25_767/_pdf/-char/en
5)NEDO
https://www.nedo.go.jp/content/100866310.pdf