日本の地熱発電

まとめ
◇地熱発電はベース電源を担える再生可能エネルギーです
◇日本は世界第3位の火山国であり原発10個分に相当する約10GWの地熱発電設備が導入可能である
◇地熱発電の計画を早急に見直し、積極的な導入へ転換することを期待する

今回は地熱発電がテーマです。日本は火山大国であり地熱発電のポテンシャルは高いが、地熱発電の開発は順調には行っていない 文献3)。理由はベース電源として原子力発電を中心に推進し、地熱発電の優先度を低くしていたことが挙げられる。実際、エネルギーミックス2030によると、地熱発電は最大で1.55GWと小さな数字の計画となっている。また、地熱資源の資源の多くが自然公園特別保護区・特別地域にあり、私的には、管轄が環境省であるのも一因ではと推定している。

地熱発電の地熱資源量

日本は小さな国土ですが多数の活火山があります。日本は、米国、インドネシアに続く、世界第3位の地熱資源国です。地熱発電は活火山が持つ熱エネルギーを電気エネルギーに変換するものです。活火山周辺の地下から蒸気または温水を汲み出し、熱エネルギーを取り出した後は低温の水として、活火山へ戻されるサイクルとなっています。

地熱貯留層概念図
出典:環境省 温泉資源の保護に関するガイドライン(H29)より

地熱資源の多いトップ5か国の活火山数と資源量の下表に示します 文献2)。日本は第3位に位置にあり、活火山の数は128個です。活火山1つ当たり、0.17~0.20GWの発電が可能とされ、地熱資源量は23GWと見積もられている。これは原子力発電所23個分に相当します。

国名活火山数地熱資源量(GW)
米国17330
インドネシア13927.79
日本12823.47
ケニア22 7
フィリピン50 6
各国の地熱資源量
出典:資源エネルギー庁(2016)エネルギー白書 2016

地熱発電の種類

地熱発電には、現時点では、2つの発電方式が主に使われています 文献4)。150℃以上の蒸気を利用する蒸気フラッシュ発電とこれより低い温度の蒸気や熱水を利用するバイナリー発電です。

蒸気フラッシュ発電では、活火山の内部から汲み出した高温の蒸気から水分を除去した残りでタービンを回転させて発電する方式です。蒸気の温度が高いので熱の利用効率が高いのが特長です。一方、バイナリー発電はより低温の蒸気や熱水を利用する発電方式です。低温蒸気や熱水を水より低い温度で蒸発する低沸点物資の媒体と熱交換して、この物質の蒸気でタービンを回転させて発電します。

その他の方式として、高温岩体発電・涵養地熱系(EGS)発電や温度差を利用して直接電力を得るゼーベック効果発電なども研究されています。

シングルフラッシュ発電の概念図
出典:NEDO「地熱開発の現状(2008)」より
バイナリー発電の概念図
出典:NEDO 地熱開発の現状(2008)より

地熱発電の導入可能量

地熱発電の資源の多くが自然公園特別保護区・特別地域にあることから、環境省では、地熱発電の導入ポテンシャルが開発の規制緩和に伴いどの程度拡大するかを見積もって 文献1)います。開発の規制緩和策について、①公園等の傾斜掘削および②公園内(第 2 種・第 3 種特別地域)普通掘削の2点を検討している。地熱発電の導入ポテンシャルは、基本(現状の規制):10.38GWが緩和策①では:14.70GW、緩和策②では:16.81GWと、何れかの開発の規制緩和策で、約40~60%拡大する結果となっている

蒸気フラッシュ発電は、地域的には、東北と九州の導入ポテンシャルが大きい。また、バイナリー発電及び低温バイナリー発電は東北、北海道および九州の導入ポテンシャルが大きい。つまり、地熱発電も他の再生可能エネルギーと同様に地域的な偏りがあります

環境省は固定価格買取制度(FIT)に基ずく地熱発電の導入可能量の見積もり 文献1)も2019年に行っている。規制緩和 条件②「公園等の傾斜掘削:なし、公園内(第 2 種・第 3 種特別地域)普通掘削:あり」かつ、現行FIT維持シナリオ「15,000kW 未満:買取期間 15年間、買取価格 40円/kWh、15,000kW以上: 26 円/kWh」の場合の、導入可能量は下表の通りとなっている。下表から、(経済的かつ国立公園の開発行為の許容範囲で)開発可能な地熱発電の発電容量は約10GW、発電電力量換算で730億kWh/年と見積もられている地熱発電は発電容量GWは小さく見えるが、昼夜の連続運転が可能でかつ気象条件に依存しないので、太陽光発電や風力発電に比べると、1GW当たりの発電電力量はそれぞれ約6倍あるいは約4倍となる。

バイナリー発電の導入可能量導入ポテンシャル量と比べると桁違いに大きく低下している。このことは、バイナリー発電の効率が悪く、高コストになっていることに起因しています。

発電方式導入可能量(GW)年間発電電力量
(GWh/年)
蒸気フラッシュ発電10.4673,200
バイナリー発電0.003  20
シナリオに基づくポテンシャル集計
地熱発電の導入ポテンシャルの再推計(令和1年 環境省)

日本の地熱発電の状況

日本の地熱発電所の現状はJOGMECのサイト 文献7)で知ることができます。日本の地熱発電所は計17カ所、総認可出力は0.48GWとなっています。

NEDOのエネルギーミックス計画2030では地熱発電は最小1.4GW~最大1.55GWの範囲となっています。しかし、現状においては、「2030年度累積:1.5GW」の実現は達成がかなり難しいと推定されると指摘 文献5)され、 「地熱発電の推進に関する研究会」でこれを打開するための具体的な提言 文献6)もなされている。

東日本大震災以降、原子力発電は安全性やコストの点で疑問もあり、更に、なにより地域住民から受け入れられない状況が続いている。この様な状況下、原子量発電に替わり、地熱発電をベース電源とするに方向への転換すべきと考える

文献
1)地熱発電の導入ポテンシャルの再推計 (環境省 令和1年)
http://www.env.go.jp/earth/report/31_pote/%E7%AC%AC3%E7%AB%A07_%E5%86%8D%E3%82%A8%E3%83%8D%E5%86%8D%E6%8E%A8%E8%A8%88_%E5%9C%B0%E7%86%B1%E3%81%AE%E5%86%8D%E6%8E%A8%E8%A8%88.pdf

2)温泉資源の保護に関するガイドライン(地熱発電関係)(環境省 平成29年)
https://www.env.go.jp/press/files/jp/105542.pdf#search=%27%E5%9C%B0%E7%86%B1%E7%99%BA%E9%9B%BB+%E7%92%B0%E5%A2%83%E7%9C%81%27


3)「目標の1.5GWが未達なら、日本の地熱は再び冬の時代に」、九州大学・江原名誉教授に聞く
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00134/121800188/

4)NEDO 再生可能エネルギー技術白書 第 7 章 地熱発電
https://www.nedo.go.jp/content/100544822.pdf


5)地熱情報研究所
http://igigeothermal.jp/news_list.php?mode=1#item2412

6)地熱発電の推進に関する研究会(平成 29年度 報告書)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/resources_and_fuel/geothermal/society/report_29fy/pdf/report_001.pdf

7)日本の地熱発電所 JOGMEC
http://geothermal.jogmec.go.jp/gathering/plant_japan/index.html