二酸化炭素CO2と水素H2からメタンCH4をつくり都市ガスに使う

まとめ
◇再生可能エネルギーから作られた水素H2ガスを発電所などから排出された二酸化炭素CO2と反応させ、メタンCH4に変える研究が行われている
◇メタンCH4ガスなら現在の都市ガス・パイプラインを使って家庭に届けることが可能となる
◇合成メタンCH4は、二酸化炭素CO2の排出量を抑えることは出来るが、天然ガスとはコスト競争力はなく、政策的な支援の判断が必要である

 今回の話題は水素H2ガスの活用です。再生可能エネルギーから発電し、水の電気分解で水素を作り、都市ガスのパイプラインにそのまま送れれば一番理想的です。しかし、不都合なことがあり、どうしたら良いのか思案していました。本日(2019/10/06)の日経新聞でヒントが得られましたので考察して見ました。

都市ガスのパイプラインで水素を送る可能性

 再生可能エネルギーで水の電気分解により生成された水素は、燃焼させても水となるだけで温室効果ガス(GHG)をほぼ出さないクリーンなエネルギーと言える。NEDOが想定する水素H2ガスの用途は、FCV(燃料電池車)や水素を燃料とした水素発電など。但し、発電用の水素H2のコストは、30円/Nm3を相当程度下回ることがが必要とのこと 参考資料1)。

水素H2分子模型(両側の白球が水素原子)

 FCV、燃料電池および水素発電には水素H2ガスのままの方が好都合である。しかし、一般の燃料として、ガスのパイプラインで水素H2ガスを送るのはリスク多いと考えられる。水素H2ガスの爆発領域が、4~75.6 vol.%(空気に対する水素の体積パーセンテージ)と都市ガスの5~15 vol.%と比べて上限が大きく広がっている。また、発熱量が都市ガスの3.8分の1と少ないので都市ガスより4倍近いガス量を送り出さなくてはならない。また、水素H2ガスを液化して輸送するには、沸点が-252.8℃と低い。一方、都市ガスの沸点は-162℃と液体窒素温度(-196℃)より高く、液化は容易である。ゆえに、水素H2ガスを都市ガスの主成分のメタンCH4に変えて、使いたくなる。水素H2ガスを二酸化炭素CO2と触媒を使って反応させてメタンCH4ガスを生成する。この方法は、発電所などの化石燃料から出てくる二酸化炭素CO2を活用するのでカーボンリサイクル技術(CCR)と言われている。

水素H2とメタンCH4の性質の比較
メタンCH4分子模型 by MolView

 2017年ごろから、NEDOと環境省のカーボンリサイクル技術(CCR)に関する取組みに参加している、日立造船(株)のコスト分析 参考資料2)によると、水素単価に占める電解電力料の比率 83.67%(電力中研の見積もり)が鍵となっている。『丸紅のUAE太陽光は発電コスト2円台』とのニュースもあり、電力単価が3円/kWhなら 水素単価は17.5円も可能としている。CO2単価=1.9円/Nm3-CO2として計算すると、メタンガスのコストは、 71.9円/Nm3となり、16.8$/mmbtu(計算時点のレート113円/USD)と見積もっている。World Bank 参考資料3)から天然ガス価格の推移が入手できる。これによると、ガス生産国の米国で4$以下、一番高い日本で6-12$となっている。したがい、コストの比較だけで判断するなら、掘り出すだけの天然ガスと化学合成するメタンガスを比べると、合成メタンガスのハードルが相当高そうに見える。全体として考えると、二酸化炭素の排出量が抑えられるので、カーボンプライシングなどの政策でコストの埋め合わせが必要だろう。

参考文献
資料1)
www.env.go.jp/earth/ccs/ccus-kaigi/2-4_1_CCUS_Utilization_Hitz.pdf#search=%27%E6%97%A5%E7%AB%8B%E9%80%A0%E8%88%B9+%E3%83%A1%E3%82%BF%E3%83%B3%E5%90%88%E6%88%90%27

資料2) http://www.mlit.go.jp/common/001302971.pdf#search=%27%E6%97%A5%E7%AB%8B%E9%80%A0%E8%88%B9+%E3%83%A1%E3%82%BF%E3%83%B3%E5%90%88%E6%88%90%27

資料3)
https://pps-net.org/statistics/gas
http://pubdocs.worldbank.org/en/928931570034997598/CMO-Pink-Sheet-October-2019.pdf