温室効果ガス(GHG)であるメタンCH4ガス

まとめ
◇地球温暖化に対して2番目に大きな影響を及ぼしているメタンCH4も増加し続けていることが確認されている
◇メタンCH4の発生源は、主に湿原、水田、家畜の消化管内発酵である。水田や畜産については、メタンの発生を抑制する方法が研究されているのでその成果に期待したい
◇嫌気性(酸素O2が少ない)の状態で、かつ還元性の雰囲気の下で、メタン生成細菌が原料の有機物からメタンCH4を作り出している

 温室効果ガス(GHG)の中で、二酸化炭素CO2に次ぐ影響の大きなメタンCH4を取り上げます。

メタンとは?

 メタンCH4は、家庭で使っている天然ガス(都市ガス)の主成分です。また、牛や羊の飼育、稲作などの過程でもメタンCH4は生成されます。メタンは、1つの炭素原子と4つの水素原子が結合した化合物です。燃焼すると、二酸化炭素CO2と水になります。燃料としては、メタンCH4はカロリー当たりの二酸化炭素CO2の排出量が少なく、化石燃料の中では、石炭や石油よりクリーンな燃料とされています。常温では無色、無臭の透明の気体です。しかし、メタンCH4の温室効果係数(二酸化炭素CO2を1とした)は25倍と大きく、少量でも大気中に放出されると、長期間に渡って、地球温暖化に悪い影響を与えます。

メタンCH4の分子模型 MolView
中央灰色が炭素、白い4つの球が水素

なぜメタンCH4が地球温暖化に関係?

 温室効果ガスGHGは、地球が熱を放出するのを妨げます 資料1)。その結果、地球に熱がこもり、地球温暖化が進みます。地球の最表面から出て行く光は-18℃とのこです 資料2、3)。 私は、それ本当ですか?と感じました。そこで、太陽からの地球への入射する光のエネルギー量と黒体輻射による地球から出て行くエネルギー量がバランスする温度が、確かに、-18℃であることを自分も確認いたしました。温度-18℃を熱放射光の波長に換算すると、中心波長が約11μmの赤外線となります。地球が放射する光の波長の範囲は、3μmから50μm程度になります。したがって、この波長領域付近の光を吸収する二酸化炭素CO2、メタンCH4、亜酸化窒素N2Oなどは温室効果ガスGHGとなります。
※黒体輻射とは、黒体から熱が電磁波として輻射/放射されることを示す。黒体放射のスペクトル分布は温度だけで定まる理想的なモデル。

メタンCH4の収支

 メタンCH4の発生源は、主に湿原20%、水田19%、家畜の消化管内発酵14%など 資料4)である。対流圏では、オゾンが反応性が高くて不安定なOHラジカルを生成させる。このOHラジカルが温室効果ガスGHGを分解するが、メタンCH4の場合は分解されるまでに5~10年かかる。少量だが土壌に吸収されるメタンCH4もある。メタンCH4は、発生量の方が消滅する量を上回っている。IPCCによると、メタンCH4は、大気中に年間44Tg増加していると見積もっている。その結果、メタンCH4による地球温暖化も毎年進んでいる。メタンCH4の地球温暖化に与える影響の大きさは二酸化炭素CO2の25倍と大きい。メタンCH4の地球温暖化に及ぼす割合は、二酸化炭素CO2の76%に次ぐ2番目に大きな16%となっている。

大気中のメタンCH4ガス濃度の推移

 大気中のメタンCH4濃度の計測には、カラム中のガス分子の移動速度の違いを利用し、特定のガスを分離して計測するガスクロマトグラフ(GC)法 資料5)が利用できる。この方法は、ほぼ地表上の測定に限られる。温室効果気体観測技術衛星「いぶき」 (GOSAT)に搭載されている、地表面からの反射光をフーリエ分光器で分光して、各波長の光の強度を測定し、温室効果ガス(GHG)濃度を測定する光学的計測法 資料2)もある。これは、温室効果ガスが特有の波長の光を吸収する現象を利用している。

 気象庁のGC測定では、南鳥島、与那国島および綾里のメタンCH4濃度は、1995年から2019年に掛けて、何れも約120ppb増えている。GOSATプロジェクトは、最新の月別平均メタンCH4濃度、メタンCH4の年間増加量、メタンCH4の濃度推移の図などを提供している。これによるとメタンCH4は2009年から2019年の間で約80ppb増加している。また、メタンCH4濃度の違いを地図上にマッピングすることで、人間活動によるメタン排出に伴う濃度上昇の検出が可能としている。

メタンCH4の由来

 メタンCH4の発生源は、湿原、水田、家畜の消化管内発酵など主だと先に述べています。これらに共通するのは、嫌気性(酸素O2が少ない)の状態で、かつ還元性の雰囲気の下で、メタン生成細菌が活動して原料になる有機物からメタンCH4を作り出します※。家畜の牛や羊、昆虫のシロアリ、更にはヒトも消化器官内でメタンCH4を排出しています。湖沼や水田に関して資料7、8)、反芻動物である牛に関しては資料8)が参考になります。

※資料15から引用すると、メタンCH4の生成は3段階で進行する。有機物は第1段階で酢酸およびプロピオン酸などの低級脂肪酸、そして乳酸やエタノー ルになる。第2段階においては酢酸以外の低級脂肪酸、乳酸およびエタノールは、水素生成細菌により水素と酢酸に変換される。最終の第 3 段階においてメタン生成菌により、メタン、二酸化炭素などに分解される。  

 メタンCH4の発生を減らす研究も行われています。家畜用の製剤 資料10)によりメタンCH4の発生を抑制することが検討されている。稲作に関しては、稲わら・稲株の秋すき込み、中干しの実施 資料11、12)、土壌の環境を酸性化 資料13)、金属腐食反応の利用 資料14)などが検討されている。逆に、廃棄物、下水汚泥や家畜ふん尿などからメタンCH4の生成を工業的にかつ効率的に行ってバイオマス 資料15、16、17)として使うことも検討されている。
 畜産や農業の分野ではメタンCH4の生成がある程度制御できそうであるが、地球温暖化が進み、永久凍土が湿原化するとどうなるのだろうかと心配になります。

参考資料
資料1)
https://green-ez1.com/wp-content/uploads/2019/08/SUM_GHE-S1-2.jpg
資料2) http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/toushin/attach/1333534.htm
資料3)
http://www.stelab.nagoya-u.ac.jp/ste-www1/div1/matsumi/lecture3a.pdf
資料4)
https://www.ipcc.ch/site/assets/uploads/2018/03/ipcc_far_wg_I_full_report.pdf#search=%27ipcc+methane%27
資料5)
https://www.data.jma.go.jp/gmd/env/ghg_obs/kansoku/method_ch4.html
資料6)
http://www.env.go.jp/press/files/jp/28607.pdf
https://www.nies.go.jp/whatsnew/2016/20160923/20160923.html
http://www.gosat.nies.go.jp/recent-global-ch4.html
資料7)
https://unit.aist.go.jp/georesenv/information/20171215/yoshioka.pdf
資料8)
http://soil.en.a.u-tokyo.ac.jp/tutinoko/memorandum/021031Tokida.pdf
資料9)
https://ocw.kyoto-u.ac.jp/ja/faculty-of-agriculture-jp/5240000/pdf/08.pdf
資料10)
https://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nilgs/2011/130e0_10_08.html
資料11)
https://rice-assoc.jp/for-famer/32-cultivation/202-2019-05-14-07-09-23.html?page=2&module_id=151&sj_class_module=2637810771566516366
資料12)
http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/techdoc/methane_manual.pdf
資料13)
https://www.nipponsteel.com/tech/report/nssmc/pdf/399-25.pdf
資料14)
http://www.geochem.jp/conf/2014/pdf/1D.pdf
資料15)
https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/8712_sogo.pdf
資料16)
http://www.hitachi-power-solutions.com/products/electricity-energy/renewable/methane/index.html
資料17)
http://www.apesj.jpn.org/DL/Matsumoto2018.pdf