温室効果ガス(GHG)排出を気にして食事しますか? 【食料品の温室効果ガス(GHG)排出】

まとめ
◇鶏肉、豚肉、牛肉の順に二酸化炭素CO2などの温室効果ガス(GHG)排出が多い
◇マグロを除き、魚は鶏肉とGHG排出が同レベルで少ない
◇輸送に伴うGHG排出が少ない地産地消が好ましい
◇ハウスものの果実や野菜は、GHG排出が多くなり、路地ものの旬なものを頂くのが良い

何を食べたら良いのでしょうか?

 肉は二酸化炭素CO2などの地球温暖化の原因となる温室効果ガス(GHG)の排出が多いと言われています。では何を食べたら良いのでしょうか? 人工肉ならいいのかな? 人工肉も、植物由来のものと、動物から採取した細胞を育てて肉をつくる培養肉があるようですね。前者は、日本人には昔からある精進料理で馴染みがある。大豆から作った湯葉、豆腐、おからなど及びこれらを更に加工した二次加工食品などがあります。培養肉は、医学分野で話題のIPS細胞やES細胞と同じように幹細胞を培養して作りますが、未来の食肉の位置づけで、未だ開発途上で品質やコストなど課題も多そうに見えます。

 一方、健康で長生きするには、日本人の現在の食生活が良いらしい 資料1、2)。長生きの秘訣は動物、植物たんぱく比1:1で摂るのが良いとされています。 過去に行われた100歳老人の食事調査でも、食肉 などの動物性食品の摂取量の多かったとのことです。そこで、種々の食品の温室効果ガス(GHG)排出量や原因を知り、対応することにしましょう。

順に、①鴨肉、②ポークソーセージ、③ビーフステーキ どれも美味しそう!

肉類の温室効果ガス(GHG)排出量の比較

  畜産用の飼料生産、飼料運送、ゲップ(腸内発酵)、育成のプロセス別の温室効果ガス(GHG)排出データを見つけました 資料3)。また、国産品と輸入品を比較したデータもあります 資料4)。見易くするために、両資料のデータの一部を図示して比較しました。使う飼料や育成の仕方などのプロセスに依存してGHG排出が違ってきます。多くの生産方法を比べると傾向が分かり難くなってしまいますが、一般には、肉類では、鶏肉、豚肉、牛肉の順番にGHG排出が大きくなっています。

 牛は腸内発酵に伴うゲップ(メタンガスCH4)が大きなウエートを占め、鶏や豚と比べて、GHG排出が大きい。羊は牛と同様に腸内発酵に伴うゲップ分が大きく、かつ、牛に比べて食用可能な部分が少なく、可食可能なkg当たりのGHG排出が牛より大きくなります 資料5)。

 また、(詳しい説明は省略しますが、)老廃物(糞ふん便、尿など)処理も重要です。温室効果が大きなメタンガスCH4(二酸化炭素CO2の25倍)や一酸化二窒素N2O(二酸化炭素CO2の310倍)が生成するので発生を抑制するのが要と言われています。更に、スーパーなどの冷凍庫の電力使用および食肉の廃棄に関するGHG排出量も検討されています。したがい、GHG排出のデータの比較には、LCA(Life Cycle Assessment=ライフサイクルアセスメント)と言っても、どの項目まで検討されているか、どのように育成したかなどの詳しい条件を知る必要があります。

食肉の二酸化炭素CO2などGHG排出量の比較

 小型魚のGHG排出の比較を行っ例を図示した 資料6)。この資料のデータは食べる部分のGHG排出を計算しているのが特徴です。アユのGHG排出係数が大きく、豚肉並みとなっている。休耕田を利用して養殖するモロコは魚体全体が食べられ、GHG排出が少なく良いと主張されている。

小型魚の二酸化炭素CO2などGHG排出の比較

食品のGHG排出を同一基準で比較

 先に述べたように、食品のGHG排出の概要を知るには、種々の食品を同一基準で比較した、GHG排出の比較データを調べるのが効率的である。そこで資料7)を参照しました:
・穀物では、米:1.3が小麦:0.45より大きい。米は稲作に伴うメタンの発生がGHG排出を大きくしている
・畜産品では、鶏肉:2.5、豚肉:3.8/5.3(国産/輸入)、牛肉:15.2/13.5(国産/輸入)と大きくなっている
・魚類のさけ・ます、さば、さんま、ぶり類では、0.7から2.3程度。まぐろが4.3と飛びぬけて大きい。養殖を除いて、GHG排出のほとんどが漁船の燃料による。
・野菜や果実はほとんどは1以下。例外は、冬春トマト:1.6、冬春きゅうり:1.7、冬春ピーマン:3.5、冬春なす:1.7、ハウスみかん:10、いちご:4である。ハウスものはGHG排出量が多くなる。
 ※:以上の数値の単位は、「kg-CO2/kg」です。

以上から、結論としては、GHG排出の観点から、
①一般には、輸送に伴うGHG排出が少ない地産地消が好ましい
ハウスものはGHG排出量多くなり、路地ものの旬なものを頂くのが良い
鶏肉、豚肉、牛肉の順にGHG排出が多い
マグロを除き、魚は鶏肉と同レベル
⑤米はGHG排出が麦の2-3倍と多い
⑥野菜はGHG排出が少ない

参考資料:
資料1)栄養面から見た日本的特質
http://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/culture/eiyo.html

資料2)はつらつ家族のヘルシーパートナー「タンパク質特集」
http://www.jmi.or.jp/common/download.php/ヘルシーパートナーNo.09%EF%BC%88バックナンバー%EF%BC%89.pdf?id=MjI2

資料3)鶏肉のCO₂排出量の算定
http://gakuen-hachioji.jp/wp-content/uploads/P030.pdf

資料4) 食 肉生 産 シ ス テ ム に おけ る環境効 率 と環境影響評価
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jietaikaiyoushi/24/0/24_288/_pdf/-char/ja

資料5)ラム肉と牛肉の比較
https://www.ewg.org/meateatersguide/a-meat-eaters-guide-to-climate-change-health-what-you-eat-matters/climate-and-environmental-impacts/

資料6)食料生産の二酸化炭素排出係数 -ホンモロコの養殖-
http://www.ns.kogakuin.ac.jp/~wwb1046/syokuhin2_oogaki_0419.pdf

資料7)日本の主要食料消費における温室効果ガス排出のライフサイクル分析と その削減ポテンシャルの評価
http://www.ritsumei.ac.jp/se/rv/amano/pdf/2009KKS-yoshikawanaoki.pdf