電気自動車用バッテリーのバックアップ電源としての活用
まとめ
◇EVやPHEVなどの電動車用バッテリーを家庭の電力系統に繋いでバックアップ電源とする方法は、現状、高コストとなる
◇電動車にACコンセントがあれば、オフラインとなるが、非常時にAC100V対応の機器が使える
◇電動車用バッテリーの他の利用法に関しては、標準で/オプションでACコンセント付き、電力系統に繋ぐ機器のみを提供するなど、自動車メーカーの対応の違いがある
今回は、EV(電気自動車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)など電動車用のバッテリーを活用することを検討致します。電動車には大容量のリチウムイオンバッテリーが搭載されています。その容量の大きさから家庭用蓄電池システムに使えれば、電力の平準化に役立つと同時に電気コストの削減も可能となります。非常時など、いざと言う状況では、AC 100V(家庭用の交流コンセント相当)が使えると非常に役に立ちます。技術的あるいはコスト的にはどうなんでしょうか?を考えます。
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家庭用蓄電システムの活用
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電動車
モーターを動力源として走行する自動車を電動車と言います。EV(電気自動車)やPHEV(プラグイン・ハイブリッド車)、HEV(ハイブリッド車)、FCV(燃料電池車)などの電動車には、軽くて大容量の特長を有するリチウムイオン電池(充放電可能な二次電池)が搭載されています(下表)。電池は直流(DC)電源となります。家電製品を使うためには、インバータで直流から周波数50/60Hz(ヘルツ)の交流に変換するのと同時に100V(ボルト)の電圧に調整するすることが必須です。自動車メーカにより、自動車に最初から外部給電用AC100Vコンセント付、オプションで選択可能、あるは純製品が準備されていない(オプション選択不可)など対応が異なります。ACコンセントやUSBコネクターの装備に関しては、車の購入時に販売店に確認してください。家電製品を使う時は、容量に制限があるので使用可能な最大電力容量を事前に確認する方が良いと思います。
注意:電動車用バッテリーの電圧は300Vを超えて使用していますので感電の恐れがあり、手で触るなどの行為は非常に危険です。スマホなどの情報機器はUSBコネクター(DC、5V)で充電できますが電圧の調整が必要です。
メーカー | 日産 | 三菱自 | ← | トヨタ | ホンダ | 単位 |
車名 | LEAF | i-MiEV | アウトランダー PHEV | プリウスPHV | CLARITY PHEV | |
種別 | EV | EV | PHEV | PHEV | PHEV | |
電池容量 充電上限 充電下限 | 40/62 <100 >10 | 16 <95 >30 | 13.8 <95 >20 | 8.8 <100 >0 | 14.94 不明 不明 | kWh % % |
家庭の電力供給
電力会社から家庭へ供給されている電気は、単相3線式200V/100Vとなっています。電線は三本(それぞれ赤・白・黒の三色の電線)で接続されています。3本の内、白い1本は中性線と言い、接地されています。大型エアコン、IH調理器、エコキュートなどの大容量機器用の単相AC200V(赤と黒の電線で供給)と電灯、低消費電力機器あるいはその他家電製品に使うコンセント用の単相AC100V(白と赤又は黒の電線で供給)です。
電動車用バッテリーを家庭の電力系統に繋ぐ
車に蓄えた電気を家庭で使う技術はV2H(Vehicle to Home)と呼びます。系統非連系型(V2G、Vehicle to Grid)と系統連系型の2種類があります。前者は電動車のバッテリーと電力会社から供給される電気を切り替えて使う(同時に使うことはない)方法です。後者は電動車のバッテリーと電力会社から供給される電気を同時に使うことが出来る方法です。
V2Hを活用すると、電動車に貯めた電気を家庭で使用したり、太陽光発電で創った電気を電動車に充電するなど、電動車を家庭用蓄電池のように使用することで、電力の平準化に役立つと共に電気料金を抑えることが可能となります。また、万が一の停電時でも、電気自動車に貯めた電気が使用できます。ただし、電動車に貯めた電気を売電することはできないとのことです。V2Hシステムは、三菱電機 文献2)(製品名:EV用パワーコンディショナ)やデンソー 文献3)(V2H-充放電器)などが販売していますが、現状は、高コストです。電動車のバッテリーと家庭用蓄電池システムの両者のメリットとデメリットを比較して決める方が良いと思います。
参考文献
文献1)
電気技術者 ’20 No.3、2020年3月15日発行
神奈川工科大 トロンナムチャイ教授 電動車の特徴とその新たな活用
文献2)
http://www.mitsubishielectric.co.jp/home/smartv2h/product/list.html
文献3)
https://www.denso.com/jp/ja/products-and-services/consumer-products/v2h/features00/index.html