まとめ
◇科学的な知識を身につけて新型コロナウイルスに対処しましょう
◇新型コロナウイルスは、症状の上では風邪やインフルエンザとの区別は難しい
◇高齢者、慢性病など、高リスクの人は新型コロナウイルスの検査を積極的に受ける必要がある

現時点(10月中旬)では、新型コロナウイルスの第2波は終盤となっていますが、感染者の数は高止まりしています。冬になると第3波の襲来が予想されています。感染症の基本は、罹った疑いのある人を出来るだけ検査し、その結果で治療や隔離するのが基本と思いますが、日本では検査自体が自由に出来ない状況が未だ継続しています。蓄積されて来た新型コロナウイルスの情報を収集し、新型コロナウイルスに罹ったと疑われた時の対応を考えてみました。新型コロナウイルスに関しては、米国CDCが総合的、俯瞰的なデータを提供していると思います。

注意:筆者は、科学の教育は受けていますが、医者でも薬剤師でもありません。ここでは、収集した情報を分析し、それを元に、「この様に考えてはどうでしょうか?」と私見を述べさせて頂いています。

PCR検査の精度

新型コロナウイルスのPCR検査の誤り率は「特異度」と「感度」の二つ指標で示される。現時点の代表的な数値を使って説明します。感染していない1,000人を検査して1人が陽性(これを偽陽性と言う)になったとすると、「特異度」は(1000-1)/1000x100=99.9%となる。一方、感染した1,000人を検査して200人が陰性(これを偽陰性と言う)になったとすると、「感度」は(1000-200)x100/1000=80%となる。

貴方がPCR検査を受けて陽性あるいは陰性の結果を得たとします。PCRの精度を考慮して、どう判断すべきでしょうか? 陽性の結果は、確度が約80%と高いので陽性と考えるのが妥当と思います。しかし、陰性と判定された場合、陽性の人でも約20%は陰性との結果(偽陰性)が出るので安心はできません。このような状況ですから、以前は、新型コロナウイルスの患者の退院の要件として、2度のPCR検査をして2回とも陰性の場合としていたのはうなずけます。

新型コロナウイルスのリスク

新型コロナウイルスに感染しても、大半の人は無症状あるいは軽症で済むとのことです。しかし、残りの数パーセントの人が重症化し、入院治療が必要になり、約1%の人が亡くなるそうです。退院できた人でも後遺症が長期間残ることが知られて来ています。

アメリカ疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention=CDC)のデータ 文献1)を使って、入院リスクを数値化し見易くしてみました。18から29歳の若者を基準(=1)として何倍のリスクがあるのかを示しています。リスク因子は年齢と代表的な基礎疾患の有無で示されています。基礎疾患があると、同年代の人のリスクに疾患のリスクが掛け合わさった数値となります。年齢が高い程、基礎疾患が多い程、入院して治療を受けるリスクが高くなっています

年齢幅0-45-1718-2930-3940-4950-6465-7475-8485以上
基礎疾患なし0.30.112345813
喘息0.40.21.534.567.51219.5
高血圧0.80.336912152439
肥満 BMI≧300.80.336912152439
糖尿病0.80.336912152439
慢性腎臓病10.4481216203252
重度の肥満 BMI≧401.10.54.5913.51822.53658.5
2つの基礎疾患651.10.54.5913.51822.53658.5
3つ以上の基礎疾患1.30.65101520254065
新型コロナウイルスによる入院のリスク
米国CDCデータを元にして作成 文献1)

また、CDCは新型コロナウイルスに感染した時の死亡リスク 文献1)も示しています。年齢と共に死亡のリスクが急上昇しています。18~29歳を基準(=1)として、死亡率は40歳以上で1桁、75歳以上で2桁上昇しています。

年齢幅0-45-1718-2930-3940-4950-6465-7475-8485以上
死亡リスク0.10.0614103090220630
新型コロナウイルス感染による死亡リスク 米CDCデータ 文献1)

治療方法の進展

新型コロナウイルスに感染者しても、回復する希望が見いだせる状況になって来ました。新型コロナウイルスの治療も、当初は症状も治療法も手探り状態だったが、現時点でも医学的には不明な点が多々あるとのことですが、最近では、重症者の症状が明確になり、既存の治療薬で治せる病気になりつつあるとのことです 文献3)文献2)他

症状など治療薬
対ウイルス重傷者:レムレシベル、軽症、中等症:アビガン
血栓症ヘパリン
サイトカインストーム(免疫の暴走)ステロイド
新型コロナウイルスに対する治療

新型コロナウイルス治療方法の進展の一方で、回復しても後遺症が長期間続く人が沢山さんいるとのこです。代表的な後遺症は、倦怠感、呼吸苦、関節痛、胸痛などの症状が残るとのことです 文献2)。新型コロナウイルスの後遺症についてネットを検索すると、イタリヤ、ドイツ、米国、中国の情報が数多く見つかります。

新型コロナウイルスの感染を疑ったら?

新型コロナウイルスに感染しても症状が出ない人が30~80%もいる 文献2)とのことなので感染者と濃厚接触した場合は感染を疑う必要があります。

風邪やインフルエンザと同様な症状が出てきたも新型コロナウイルスの感染も疑う必要があります。新型コロナウイルス感染の症状は風邪やインフルエンザとの違いが少なく、区別が難しい様です。コロナウイルスの感染はウイルスに晒されてから、最短で2日程度、多くの場合、4~5日後に発症するとのこと。味覚や臭覚異常を伴うこともある風邪やインフルエンザが1週間以上続くことは少ないが(咳や痰の症状だけが残ることも)が、新型コロナウイルスは2週間も続くこともある 文献2)他

AIを活用し、濃厚接触の有無、出て来た症状などの質問に答えるとPCR検査等の必要性が数値化されて出てくる様な公的な仕掛けをつくって欲しいものです。その結果から、だれでも、PCR検査等が滞りなく受けられる様にして貰いたいと考えています。

新型コロナウイルス感染時の症状 文献1)
・発熱または悪寒
・咳
・喉の痛み
・息切れまたは呼吸困難
・倦怠感
・筋肉や体の痛み
・頭痛
・鼻づまりまたは鼻水
・下痢

新型コロナウイルスに感染した疑いがある場合、実際、どうすれば良いのでしょうか? 私は先に述べたリスクを考慮してPCR検査等をやる/やらないの判断をすべきと思います。高年齢や基礎疾患のリスクが5を超えるようなら絶対PCR検査等を受けるべきだと考えます。健康でも65歳以上、基礎疾患をもつ30歳以上の人などがリスク5以上となります。公的機関(公的ルート)などにPCR検査等を強く申し込むべきです。公的機関でPCR検査等を拒否された場合でも、現在では、私費(1万円程度)で検査を実施できます。

また、CDCによると、感染が疑われる人が以下のの兆候のいずれかを示している場合は、直ちに救急医療を求めるべきとしています。
 ・呼吸困難
 ・胸の持続的な痛みまたは圧迫
 ・新しい錯乱/混迷
 ・目を覚ますことができない、または目を覚まし続けることができない
 ・青みがかった唇または顔

更に、CDCは、新型コロナウイルスによる重篤な病気のリスクが高くなる因子を多数リストアップしています。ここでは3つだけピックアップしました。
・癌
・妊娠
・喫煙

資料

文献1)CDCのページの例
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/need-extra-precautions/index.html

文献2)忽那賢志 感染症専門医の記事の例
https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20201011-00202608/

文献3)日経新聞 2020/10/02記事 「新型コロナ 治せる病気に」など