まとめ
◇ガイガーカウンター・キットを購入し、組み立てた。主な作業は約2時間の半田付けであるが、完成品よりは安価に手に入る
◇ガイガーカウンターは、放射線量に比例した計測が出来ていることの確認および絶対値の校正が重要だが、未だ何れもできていない
◇自然放射線の量は、一般に言われている数値の1/2程度と低い数値が得られた
◇自宅の庭の地表の放射線量を測定すると、場所によっては自然放射線の4倍の数値を示す箇所(ホットスポット)もあった
福島第一原発の視察をきっかけに、自宅周辺の放射線量を測りたくなりました。今回のテーマはガイガーカウンターです。価格を抑えるために組立キットを購入し組み立てました。
はじめに
2011年3月11日に発生した東日本大震災から8年半が経過しました。福島第一原発のメルトダウンに伴い、関東の私の住む地域にも放射性物質の降灰がありました。放射線量の高い箇所のある公園などでは、表土を剥がして、地中に埋める作業が既に行われています。その後の放射線量はどうなっているのか知りたくなりました。きっかけは、11月下旬の福島第一原発の視察です。訪問時にガイガーカウンターを持参したかったのですが叶いませんでした。
ガイガーカウンターとは
ガイガーカウンターは、ドイツのガイガーとミュラーが開発したガイガー=ミュラー管(GM管)を応用した放射線量計測器 資料3)です。GM管の構造は、中空の円筒とその中心を通す電極から構成されています。購入したGM管の中空部には不活性ガスのアルゴンArにネオンNeと臭素Br2を加えた混合ガスが充填されています。外側の円筒(陰極)と中心の電極間(陽極)間には高電圧が印加されているが、両極間には電流は流れていません。購入したキットの電極間に印加された高電圧(プラトー電圧)を測定すると186Vでした。但し、印加電圧を測定している間は放射線がカウントされていない様なので正確に電圧が測れたかやや疑問も残ります。
高エネルギーの放射線がGM管を通過すると、充填された混合ガスと衝突し、ガスは電離しプラスイオンとマイナスの電子の対が出来る。GM管内には高電圧が印加されているので、プラスイオンは外周の円筒に、一方、電子は中心の電極に向かって加速されながら飛んで行く。イオンや電子の飛行の途中で他のガス分子にも衝突して新たなプラスイオンとマイナスの電子の対が次々と出来る(雪崩現象と言う)。この時、 両電極間にはパルス状の電流が流れる。この様な原理の計測方法なので、ガイガーカウンターによる計測では、放射線の数は計測できるが、放射線のエネルギーの大きさや線種(α線、γ線、β線など)の区別/判別はできない。
ガイガーカウンター・キットの組立
購入したのは部品点数が約30個のガイガーカウンター組立キットです。組立キットの作業の大半はエッチングされた銅張り基板への部品(抵抗、コンデンサー、ダイオード、ICなど)の半田付作業です。最近の鉛フリー半田は濡れや流れが良くなく作業し難いです。約2時間掛けて何とかキットを組み立てることが出来ました。電源を入れると問題なく一発で動作しました。極性のある電解コンデンサー、ダイオード及びICの取り付け方向の間違いがなかった、更に半田付けも電気的にオーケーだったのでしょう。
ガイガーカウンターは大きさ:直径10mmx長さ108mmの旧ソ連製軍用GM管を使用しています。 測定結果の表示は16文字×2行のキャラクタ LCDです。キットメーカーによると、β線(電子)とγ線の検出が可能と示されているが、β線は透過力が弱いので 資料4)ほぼγ線のみと推定しています。 放射線を感知すると光と音で知らせてくれます。ディスプレイに表示されるのは、μSv/h(=マイクロシーベルト/時間)とカウント数(カウント数/分と累積カウント数)です。電源はアルカリ電池を6個積層した「006P」ですが、5V直流(USB電源など)も利用可能です。
放射線量の測定結果
先ず初めに自宅の自然放射線量を測定しました。その結果、0.090~0.121μSv/時の範囲で変動しますが、平均値は 0.11μSv/時程度とみられました。日本の自然放射線量 資料5)は2.1mSvとのことなので、時間に換算すると0.240μSv/時となります。したがって、今回組み立てたキットでは自然放射線量の1/2と小さい値が表示されます。このことを考慮して測定結果の判断が必要です。
追記:計測値は、他の製作者の情報でも、同様に低い値(約1/2)が出るようです。また、放射線量に比例した計測(リニアリティー)に関しては、GM管の設計によります。封入ガスの種類や電極の形状など。GM管の仕様を遵守すればリニアリティーは確保されると思いたい。
自宅の庭の放射線量を測定してみました。地表面上で計6箇所を測定しました。測定数値はそれぞれ、0.496、 0.187、 0.218、0.157、0.193、0.181でした。地表上では明らかに空気中より数値が上昇しています。0.496μSv/時を示した場所は、予備測定した時も高い数値が出たのでホットスポット(放射性物質が降灰して溜まっている箇所)であると考えられます。この値を2倍しても1μSv/時なので、健康には問題ないレベルと思われます。雨水桝上でも1カ所測定しました。その値は 0.109μSv/時であり、自然放射線量の値とほぼ同じでした。地表から1m程度離れているからと推定されます。
参考資料
資料1)
http://netiodev.com/KGM2.pdf
資料2)
https://www.gstube.com/data/2398/
資料3)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%82%AC%E3%83%BC%EF%BC%9D%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%83%A9%E3%83%BC%E8%A8%88%E6%95%B0%E7%AE%A1
資料4)
https://www.fepc.or.jp/nuclear/houshasen/houshanou/shurui/index.html
資料5)
http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/policy_others/radiation/about/sekaitonihon.html