まとめ
◇アスベスト(石綿)汚染は身近にある可能性がある
◇日本では2006年までアスベスト(石綿)は使われ続けた。これ以前の建築材料や家庭用用品には注意が必要である
◇アスベスト(石綿)健康被害は15年~40年程遅れて発症すると言われている。被害のピークは2030~2034年ごろと推定されている
◇身近にあるアスベスト(石綿)は適切な処理をして追放しましょう
今回は身近な環境問題を取り上げます。アスベスト(石綿)の汚染問題です。クボタ・ショック(2005年6月29日)から本年は14年目ですが身近な所に危険なアスベスト(石綿)があるかも知れません。我が家には1982年製造の耐火金庫にアスベスト(石綿)が使われていましたので今回処分致しました。皆様も、自宅、職場などの環境を再点検してみては如何でしょうか?
アスベスト(石綿)の健康障害
(株)クボタが社員や元社員のアスベスト(石綿)による健康被害について発表した(2005年6月29日)。同社のニュースリリース 文献1)によると、石綿疾病患者(退職者を含む)の状況は、①S53~H16 石綿疾病による死亡者数:75名 (内、中皮腫による死亡者:42名)、②現在療養中の者:18名 (内、中皮腫による療養者:4名)となっている。この報道(クボタショック)により、日本でもアスベスト(石綿)の全面使用禁止の規制が一気に加速した。しかし、海外に目を向けると、1960年代にア スベスト(石綿)の危険性について議論 文献2)されていた。また、国内でも遅くとも1970年代にはアスベスト(石綿)の問題はかなり知られていたが抜本対策が遅れたのが非常に残念です。
中皮腫じん肺アスベストセンター 文献9)によると、アスベスト(石綿)がおこす健康障害は、悪性中皮腫、石綿(アスベスト)肺癌、石綿(アスベスト)肺の他2つの計5つの健康障害があるそうです。また、平均40年前後の潜伏期(原因から病気が発病するまでの期間)があるとのことです。したがって、このアスベスト(石綿)の健康障害は2050年ごろまで継続する問題となります。アスベスト(石綿)の健康障害のピークは2030~2034年ごろ 文献4)と予想されてもいます。
アスベスト(石綿)/いしわたとは?
アスベスト(石綿)は、「せきめん」「いしわた」と呼ばれている、天然に産する繊維状ケイ酸塩鉱物 文献5) です。 石綿には6種類あるが、主に使われて来たものは、有害性の高い順に、アモサイト(茶石綿)、クロシドライト(青石綿)およびクリソタイル(白石綿)の3種類 文献2)であった。
アスベスト(石綿)は、直径がミクロンオーダーから数十ナノオーダーの繊維状であり、耐熱・耐火性、断熱性、絶縁性、防音性、耐酸性、耐アルカリ性などの特長を有し、かつ安価であったために、建築材料や家庭用品に幅広く使われて来た。アスベスト(石綿)は極めて細いため、粉落ちしたもの※は飛散しやすく、人の呼吸により容易に吸引してしまいます。これが数十年遅れて健康障害をおこすのです。
※繊維が剥がれたり、折れたりして粉上になって落下したもの
アスベスト(石綿)は何に使われたか
アスベスト(石綿)の8割~9割が建材製品で、残りがその他の一般材料 文献7) 8)とし使われた。石綿は安価で、耐火性、断熱性、防音性、絶縁性など多様な機能を有していることから建築材料として使用されてきました。その使用形態は吹付と添加されたものがあります。
・吹き付けアスベスト(石綿):耐火、断熱、防音の目的で1956年ごろから1975年ごろまで壁や鉄材の保護に使用
・アスベスト(石綿)の添加:①セメント板、屋根用スレート、石膏ボードなど屋根・壁材、ビニールタイル等内装材など
②建築材以外では、配管や機器のガスケット、漏洩防止用パッキン、
自動車のブレーキ・ライニングやクラッチ・フェーシングなど、
③接着材、ペイントなど
家庭用の製品のうち、185社774製品にアスベストが使用 文献6)されていた(平成17年(2005年)12月28日現在)。幾つかピックアップすると、①電気製品:トースター、電磁調理器、冷蔵庫、洗濯機、アイロン、掃除機、エアコン、ヘアドライヤー、こたつ、電気ストーブなど、②ガス・石油製品:ファンヒーター、ストーブ、湯沸器、ガスコンロ、③その他】:自転車、金庫、釣り用リールなどである。この結果からは2006年以前に製造された家庭用品はアスベスト(石綿)が使われている可能性があるということになります。
我が家では、耐火金庫がありました。金庫のドアの裏面四周に約1cm幅の縁取りシールが石綿リボンではと思い調査しました。ドアの開け閉めに伴い、床上に白い粉が落ちていました。メーカーに問い合わせてアスベスト(石綿)であることを確認し、クリーンセンターへ連絡し、引取業者を紹介してもらいました。この業者に金庫の回収をお願いしました。回収された金庫は解体処分されると聞きました。金庫のアスベスト(石綿)使用情報は文献10)で確認して各メーカーのサイトを訪問されるのが良いかと思います。
アスベスト(石綿)の規制
日本のアスベスト(石綿)の規制は 文献2)にると次のように段階的規制になっています。規制の経緯から判断すると、特に毒性の強いものかつ危険な吹付作業に焦点が当てられいたことが分かります。一方、ヨーロッパ諸国は、全石綿が原則使用禁止 文献3)となったのがポイントです。アイスランド:1983年、ノルウェー:1984、比較的遅く規制したオランダ:1991年、イタリア:1992 年、ドイツ:1993年となっています。日本のアスベスト(石綿)の規制がヨーロッパ諸国と比べると、10数年から20数年遅れてしまいました。日本の段階的規制とヨーロッパの全面的規制の違いは何処から来たのでしょうか? 国民の健康を守る観点からは、疑わしきものは取り敢えず全面規制して、問題がないことが判明したら、順次緩和すれば良かったのではと考えます。
アスベスト(石綿)の規制 文献2)
1975年 青石綿・茶石綿吹き付け(5%以上)禁止
1995年 青石綿・茶石綿の輸入・製造・使用禁止
1995年 白石綿吹き付け(1%以上)禁止
2004年 全石綿の原則使用禁止 (代替品のない製品を除く)
2006年 9月1日から全面禁止
参考文献
文献1)
https://www.kubota.co.jp/kanren/index1.html
文献2)
http://www.econ.ryukoku.ac.jp/~tlee/seminar-6.files/G2-kubota-Asbestos-v1.pdf#search=%27%E3%82%A2%E3%82%B9%E3%83%99%E3%82%B9%E3%83%88kubota%27
文献3)
https://www.env.go.jp/recycle/report/h18-01/chpt5.pdf#search=%27%E3%82%A2%E3%82%B9%E3%83%99%E3%82%B9%E3%83%88+%E8%A6%8F%E5%88%B6%27
文献4)
https://www.min-iren.gr.jp/?p=4678
文献5)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/sekimen/topics/tp050729-1.html
文献6)
https://www.env.go.jp/air/asbestos/housewares/
文献7)
https://www.erca.go.jp/asbestos/what/whats/basyo.html
文献8)
http://asfu.jp/page022.html
文献9)
https://www.asbestos-center.jp/asbestos/qanda.html#anchor1
文献10)
https://www.nihon-safe.jp/pdf/asbestos-2.pdf#search=%27%E3%82%A2%E3%82%B9%E3%83%99%E3%82%B9%E3%83%88+%E9%87%91%E5%BA%AB%27