「支援・介護サービス」まとめ
◇健康寿命を延ばす努力をする
◇平均余命、介護期間、費用などの統計データを掴んでおく
◇自宅周辺で利用できる施設、利用可能な支援・介護サービス、費用などを事前に調べておく
◇ 自分の終末の迎え方をイメージする

前回は亡くなった時の手続き、遺言の残し方、相続などを扱いました。今回は、支援・介護サービスや老人ホームの活用方法などを取り扱います。

はじめに

「人生100年時代」と言われていますが、本当に、そのようになりそうです。健康の維持が特に大切であることは言うまでもありません。しかし、高齢になると、いずれ、体力や知力の衰えにより、終末期には、日常生活の支援や介護の必要性が出て来ます。健康の問題は個人差が大きいのは言うまでもありませんが、統計データを掴んで置けば、将来の備えになると考え、この記事を記します。当然、お金の準備も必要となります。

寿命と介護・支援の期間、費用

 平均的にあと何年生きられるのかを、先ず、知りましょう。各年齢の人が平均的にあと何年生きられるかを統計的に示しているのが「平均余命」です。0歳児童の平均余命は、「平均寿命」†となっています。あなたの現在の年齢と平均余命を加えた数値は、平均寿命より、大きな数値となっています(図1)。65歳以上の高齢者の多くは90歳を超えるまで生きることが出来ます。
†2019年度の日本人の平均寿命は男性:81.41歳、女性: 87.45歳です。

 次にいつまで健康に暮らせるのかを知りましょう。日常生活に制限のない期間である「健康寿命は、2016年のデータ(少し古い)では、男性:72.14歳女性:74.79歳となっています。65歳以上の高齢者の「現在の年齢+平均余命」から「健康寿命」を引けば、平均的な支援や介護が必要な期間を推測できます。多くの人が90歳以上まで生きるので、寿命を全うするまでに十数年は何らかのサポートが必要となってくる可能性があるとの計算になります

図1 日本人の寿命 資料1)

生命保険文化センターが行った調査 資料2)では、平均の介護期間は4年7カ月 脚注)、費用に関しては、一時費用:69万円、月々の費用:7.8万円とのことです。総額を計算すると498万円となります。但し、全ての介護期間を民間の有料老人ホームで過ごす場合は、月額約20万円必要ですので、総額は約1,100万円にもなります
注意):想定より期間が短くかつ費用も少ない数値となっています。 生命保険文化センター の調査は、介護だけに限定(軽度の支援は含まず)している、また、費用の月額の少なさから判断するに、在宅介護が大半と推定されます。

 介護保険制度は、介護が必要な高齢者を社会全体で支える制度で、2000年に創設されました。被保険者は40歳以上の人が対象で、介護保険給付の範囲や保険料の決定・徴収方法の違いから、65歳以上が対象の第1号被保険者と40~64歳までの医療保険加入者を対象とする第2号被保険者に区分されています。要介護認定を受けると、給付が行われますが、年収に応じて、1割、2割、3割の自己負担があります。注意点は、居住費、食費、日常生活費はほぼ自己負担となります。

生活支援、介護、看取り

 介護保険事業の報告書 資料4、5)によると、 1999年末の65歳以上の年齢者の人口は、全人口の約28.3%の3,555万人となっています。そのうち、前期高齢者(65歳以上75歳未満)は1,726万人、後期高齢者(75歳以上)は1,829万人となっています。要介護(要支援)認定者は65歳以上では人口の18.5%の656万人(男性204万人、女性452万人)となっています。 40歳以上65歳未満者の 要介護(要支援)認定者も13万人(男性7万人、女性6万人)います。年齢と共に要介護(要支援)認定者は増加しています(図2)。85歳以上になると、半数以上の人が介護や支援が必要となっています

図2要介護・支援者割合 資料4、5)

 要介護・要支援になる理由も報告 資料6)されています。少し古いデータですが、2013年の原因疾患は多い順に、脳血管疾患、認知症、高齢による衰弱、骨折・転倒、関節疾患の順となっています。

図3 資料6)

支援・介護サービスや老人ホームの活用

 老人ホームは色んな種類がありどれを選べば良いか迷います。有料老人ホームは、「健康型」「住宅型」「介護付」の3種類に分類(表1)されますが、数が多いのは「住宅型」と「介護付」です。各自の状況(自立、支援、介護、認知症、看取りのレベルの違い)により入居できるホームが違ってきます。更に、在宅復帰までの限定期間のみのホームもあります。経営主体は民間施設公的施設の2つがあります。毎月の入居費用は後者の方が安いです。

 シニア向けマンションは、住宅を個人が購入し、運営会社の食事等のサービスを受け、介護が必要になったら訪問介護等の介護サービス受けるスタイルが多いと思います。自立できるレベルから軽度の要介護者が対象です。住宅の価格が一般住宅と比べて高いかつ運営費(管理費に相当)も高いがデメリットと考えています。

老人ホームは種類が多くて、何処が最適なのか迷ってしまいます。支援や介護が必要になる前に、自宅の周辺の有料老人ホームのサービス内容、コストおよび実体を調べて、その日に備えるのが良いと思います。持ち家がある方は出来るだけ自宅で支援や介護を受けることでコストを減らすことも検討された方が良いと思います。場所にもよると思いますが総額の1/3以上は住居・施設費となっていると推定しています。

種類健康型住宅型介護付
サービス食事等のサービス付き居住施設
生活支援等のサービス付き居住施設
介護等のサービス付き居住施設
介護対応介護が必要になると、契約を解除して退去入居者自身が地域の訪問介護等の介護サービスを選択して、ホームでの生活を継続ホームが提供する介護サービス「特定施設入居者生活介護」を利用
表1 老人ホームの大まかな分類 資料7)

参考資料

資料1)平均寿命と健康寿命の推移
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/19/backdata/01-01-02-06.html

資料2)介護にはどれくらいの年数・費用がかかる?
https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1116.html

資料3)介護保険給付における利用者負担
https://www.mhlw.go.jp/content/000801559.pdf

資料4)人口・世帯
https://www.stat.go.jp/data/nihon/02.html

資料5)令和元年度 介護保険事業状況報告(年報)のポイントhttps://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/jigyo/19/index.html
https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/jigyo/19/dl/r01_gaiyou.pdf

資料6)原因疾患 構成割合
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/0000110896.pdf

資料7)有料老人ホームの概要
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12600000-Seisakutoukatsukan/0000038009_1.pdf