まとめ
◇酵母菌によるアルコール発酵の実験を行います
◇ぶどうの皮に付着した「酵母菌」と「砂糖を溶かした水溶液」でアルコール発酵を試みます
◇観察記録は逐次アップデートして行きます


酵母の観察実験は以前も行っています。今回は酵母菌に関する基礎知識の拡充に加えて、実験の手順も記載しています。観察記録は今後も継続し、実験終了まで更新して行きます。

注意:「アルコール分1度以上の飲料」は酒税法の規制対象 資料0)となります。したがって、アルコール飲料をつくることは絶対しないで下さい1度以下の低濃度のアルコールか、観察に十分な量の1ml(1cc)程度の少量に留めて下さい。

酵母の基礎知識

酵母】資料1)
 酵母/酵母菌は、分類学上、カビ群と同じ菌類中の真正菌類に属する。酵母は、細胞壁を持つ単細胞性の微生物で、自ら移動する(動く)ことはできません。酵母菌の大きさは数μm~十数μmサイズで、非常に小さく、顕微鏡なしでは観察はできません。発酵食品にはこの酵母菌が必ず必要です。日本酒、ワイン、ビールなどの酒類、味噌・醤油、漬物、パンつくりなどに酵母菌が活躍しています。

 酵母は出芽酵母分裂酵母の2つのタイプの酵母があります。 出芽酵母は楕円形(直径約5µm)の形状をしていて、出芽することで増殖するタイプです。一方、分裂酵母は円筒形(直径約3-4µm; 長さ約7-15µm)の形状で、中央で分離して増殖するタイプです。酵母は、毎約2時で2倍に増殖するとのこと。日本酒や焼酎の醸造は日本醸造協会が提供する出芽酵母を使うのが一般的で、分裂酵母はほとんど使われてないとのことです。

嫌気性/好気性 資料2)
 酵母は酸素がある場合(好気性の環境)と酸素がない場合(嫌気性の環境)では異なる働きをします。酸素があるとぶどう糖(グルコース、C6H12O6 )を二酸化炭素(炭酸ガス、CO2)と水(H2O)に分解する好気呼吸の働きを行います。
 C6H12O6 + 6O2 → 6CO2 + 6H2O   好気性の環境下
一方、酸素がない/少ない環境では、ブドウ糖がエチルアルコール(飲むアルコール、エタノール、2C2H5OH )と二酸化炭素に分解される嫌気呼吸を行います。 この働きをアルコール発酵 資料3)と言います。
 C6H12O6 → 2C2H5OH + 2CO2    嫌気性の環境下

天然酵母 資料4)
 酵母の種類は自然界に何千種類も存在します。穀類、芋類、果物や花などに付着しているそうです。天然酵母を分離してそれぞれの特徴を見出すのも面白そうです。

限界アルコール度数 資料5)
 アルコール発酵は、酵母がブドウ糖エタノール二酸化炭素に分解することを言います。ブドウ糖は酵母によってどんどんエタノールに分解され、それに比例してアルコール度数も高くなっていきます。どこまでもアルコール度数は高くなるのでしょうか? ご承知の様にアルコールは消毒液としても使われます。酵母は自分で作ったアルコール度数が約20度に達すると死滅するとのことです。→発酵の終盤で酵母が見られないようになる場合は酵母が死滅した可能性があります。また、醸造酒である清酒やワインのアルコール度数の上限は十数パーセントであるのも理解できます。

アルコール発酵の実験

ガラス容器でアルコール発酵実験を行う。蓋もガラス製でシリコーンゴムのパッキンで密閉する構造です。パッキンからの酸素の侵入を防止する目的でサランラップで覆っています。本日は開始から3日目で、今後も、観察記録を追加して行きます。


(1)容器の殺菌
 沸騰したお湯でガラス容器や蓋の殺菌を行う(湯洗)。

(2)発酵溶液
  発酵溶液は、ぶどうを絞ったぶどうジュースでも良いが、ここでは砂糖を溶かした水溶液を発酵溶液とします。お湯を冷ました水にグラニュー糖を溶かして砂糖液をつくる。
注意:飲料をつくるのが狙いでないので出来るだけ少量にしましょう。

(3)酵母菌
 酵母菌の元として、ブドウの皮を加える。生のぶどうには酵母が付着しています。ブドウは洗わないで使用します。洗剤での洗浄は避けて下さい。前回は「デラウェア(小粒の種なしぶどう)」を使いましたが、今回は贅沢に「巨峰」を使いました(笑)。

(4)アルコール発酵
数日経つと発酵溶液の液面に二酸化炭素の小さな泡が浮いて来ます。この段階で、一度、容器の蓋を取って、アルコールの臭いがすればアルコール発酵が確認されたことになります。

観察記録を残しましょう。

経過日数観察結果備考
0試料の仕込み(2021/08/14)机の引き出しに保管
2変化見られず
4白カビ発生か?液から頭を出したぶどうの皮の表面の一部が白く見える
8白カビ確認顕微鏡で白カビを確認。一方、酵母は増殖していた
観察記録

発酵容器

白カビ発生 4日経過後以降、白いカビが見られ、面積が大きくなってゆく。顕微鏡で白カビと確認した。

酵母の観察  念のため、培養液を調べてみたところ、酵母がいました。 出芽酵母の特長である、縦に2つの酵母が繋がったものが多数見られます。

今回の酵母の写真

↓酵母の動画  動画も撮影しました。酵母が動いている様に見えます。酵母自体には運動能力がないと言われていますので、風や水のブラウン運動の影響で酵母が動いているものと推定しています。

今回の実験の総括

 実験終了後に発酵容器を開けてもアルコール臭はしませんでしたので、今回の実験の目的のアルコール発酵には失敗したと判断しています。砂糖培養液から頭が出たブドウの皮から白カビが発生し実験を中止しました。しかし、酵母は増殖していたのには驚きました。また、酵母が活動すると、酵母の呼吸やアルコール発酵に伴うCO2(二酸化炭素)が発生し、小さい泡が出て来ますが、今回は見られませんでした。

参考資料
試料0)国税庁の酒類の定義
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/qa/01/01.htm

資料1)酵母の基礎知識
http://jasnet.or.jp/4-shuppanbutu/pickup/17.03.pdf
https://tenure5.vbl.okayama-u.ac.jp/HM_blog/?p=97

資料2)好気呼吸と嫌気呼吸
https://www.sci.keio.ac.jp/gp/2E73001A/17A5C7C5/F075937D.pdf

資料3)酒造り
https://www.sawanotsuru.co.jp/site/nihonshu-columm/knowledge/nihonshu-yeast/
https://www.suntory.co.jp/customer/faq/001688.html

資料4)天然酵母
https://allabout.co.jp/gm/gc/217262/
http://www.hanakoubo.jp/about/index.html

資料5)上限アルコール度数
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%8C%E5%85%A8%E9%86%97%E9%85%B5
https://www.wadaryu.com/blog/archives/94.html